2005 Fiscal Year Annual Research Report
大気擾乱に起因する乱流拡散の全球的な強度分布の解明
Project/Area Number |
05J11189
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古市 尚基 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 深層海洋大循環 / 乱流拡散(乱流混合) / 海洋内部波(海洋内部重力波) / バイスペクトル解析 / 投棄式流速計(XCP) / 大気擾乱 / 三波共鳴 / parametric subharmonic instability (PSI) |
Research Abstract |
深層海洋大循環は、赤道域から極域への熱輸送を通じて、気候形成の上で重要な役割を担っている。この深層海洋大循環は、密度躍層内の乱流拡散というサブグリッドスケールの現象に強くコントロールされていることが知られている。気候変動を予測できる高精度な数値モデルの構築のためには、この密度躍層内の乱流拡散を適切にパラメータ化し、その全球的なマッピングを行なうことが不可欠な課題である。 乱流拡散の直接観測は特殊な測器や長い観測時間を要するため、この方法によって乱流拡散の全球的な分布を把握することは現実的ではない。そこで本研究は、乱流拡散の主要なエネルギー源の一つである大気擾乱に注目して乱流拡散の強度分布についての考察を行う。すなわち、大気擾乱によって励起される鉛直低波数内部波の伝播およびエネルギー散逸過程を調査することで乱流拡散の全球分布の解明を目指す。 平成17年度、本研究はexpendable current profiler (XCP)を用いた海洋観測、およびスペクトルモデルを用いた数値実験を行い、低鉛直波数内部波エネルギーを散逸させる主要メカニズムを調査した。特に数値実験では、バイスペクトル解析の手法を用いて、得られた実験結果を詳しく調べた。結果、parametric subharmonic instability (PSI)と呼ばれる内部波間の三波共鳴現象が低鉛直波数内部波の活発なエネルギー散逸を引き起こすことを世界で初めて立証できた。また、乱流拡散の強さは、PSIが最も効率的に働く、鉛直低波数内部波の周波数が2f-3f(fは局所的な慣性周波数)となる緯度帯でピークを持つことがわかった。 現在は、3次元の数値モデルを用いて、大気擾乱エネルギーによって励起される、低鉛直波数内部波の全球的な発生・伝播の状況を調べている。
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Research Products
(2 results)