2006 Fiscal Year Annual Research Report
弱い相互作用によるJ/φ粒子の崩壊についての解析研究
Project/Area Number |
05J11204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山村 大樹 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 素粒子実験 / J / φ粒子 / QCD / TOF測定器 / 光電子増倍管 |
Research Abstract |
まず本研究代表者は、平成16年度より、BES-III実験のための飛行時間測定器(TOF)の開発研究に携わってきた。TOF測定器に用いる光電子増倍管(PMT)が磁場中において十分な性能を有しているかどうかの試験を行うため、キャリブレージョンシステムを自ら開発・設計・製作し、そのうえで、BES-III用に生産された約550本のPMT全てについての性能試験を行った。性能試験は、高エネルギー加速器研究機構の東カウンターホールにある牛若電磁石を用いて行った。各PMTについて、BES-III検出器内と同じ磁場1テスラ内における電流増倍率や時間分解能の特性を評価し、要求性能を満たしていることを確認したうえで、BES-IIIにて使用する448本のPMTの選別を完結させた。 また今年度からは、物理解析の研究も本格的に開始した。BES-II実験のデータを用いて、J/φ粒子がバリオン-反バリオン対に崩壊する事象についての解析研究を行っている。J/φ崩壊事象では、グルーオンを介したQCD事象が様々発生する。ここで、BES実験でのQCD事象は、高々3GeV程度と、低いエネルギースケールでの現象となるため、QCDの結合定数αsについて摂動論のみでの記述が困難になる。そこで、バリオンペアへの崩壊事象に対しても、摂動論モデルへの様々な修正が検討・議論されてきた。こうした背景のもと、本研究代表者は、J/φ粒子がpp(陽子-反陽子)に崩壊する事象の解析を行った。崩壊分岐比やバリオンの角度分布について、それまでの実験にはない精度での測定を行ったうえで、クォークの質量やバリオンのスピンを考慮した修正QCD理論との詳細な比較をすることで、この修正モデルの妥当性に関する具体的な議論を進めることができた。
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