2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11220
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 聡 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 半古典理論 / 化学結合 |
Research Abstract |
本研究で報告者は、現代分子科学の基礎であるボルン-オッペンハイマー近似を、分子を構成する粒子の質量比の変化という観点から捉えなおし、その適用限界が従来考えられているよりも広範囲にわたるという事実を理論的に明らかにした。本研究は、水素分子イオンH_2^+類似のクーロン3体系に対する半古典全粒子エネルギー量子化と、ボルン-オッペンハイマーの理論の摂動論的解析から構築される。 研究の前半部分では、水素分子イオンH_2^+と、その電子をミューオン、反陽子、そしていくつかの仮想粒子で置換した分子の制限された運動を考え、EBK量子化ならびに、報告者によって以前提案された半古典量子化の手法であるrenormalized AFCを適用した。2つの半古典手法から計算された結果を比較することによって、BO近似における誤差が(負電荷質量)/(陽子質量)の1.5乗に比例することを数値的に発見した。 後半部分では、上で述べた数値的発見を受け、ボルンとオッペンハイマーが展開した摂動理論において、5次のエネルギー項がゼロであることを証明した。彼らの仕事では、質量比の1/4乗を摂動パラメータとする摂動展開において、エネルギーの0次項が電子エネルギーに対応し、2次項、4次項がそれぞれ核の振動および回転のエネルギーに対応することが示されていた。つまり本研究で証明された事実を換言すると、BO近似に対する最低次オーダーの補正がゼロということである。それ故非ゼロの補正は質量比6/4乗に比例する6次の項から始まることを意味する。これは上で得られた数値的観察と一致する。その結果、従来多くの文献において、質量比が小さい場合に適切であると理解されていたボルン-オッペンハイマー近似が、実際にはその適用範囲がより広範囲であることが示された。
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Research Products
(1 results)