2005 Fiscal Year Annual Research Report
局所平衡を大きく破る現象に対する統計理論の測定量関係式からの構築
Project/Area Number |
05J11222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 久美子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 小さい非平衡系 / 非平衡定常状態 / 揺動散逸関係式の破れ / ランジュバンモデル |
Research Abstract |
私が研究の対象にしてきた系は、ブラウン運動で揺らぎながら溶媒中を浮遊するコロイド粒子である。コロイド粒子は原子や分子よりはるかに大きいため、直接荷電したコロイドに外力をかけることが可能だ。非平衡性を直接受けるため溶媒中のブラウン運動は平衡状態におけるそれとは大きく異なる。私の研究課題である局所平衡を破る系の現象はコロイド粒子から成る小さい非平衡系で観測されるというわけだ。このような小さい非平衡系の実験は技術の向上に伴い近年盛んである。 私は小さい非平衡系の典型的モデルである「外力に駆動されるブラウン粒子が周期ポテンシャル中を運動する」というランジュバン確率過程モデルを対象に理論的な方法で研究を行った。拡散係数と微分易動度の比が環境の温度に一致することが、1体系のアインシュタイン関係式(線形応答関係式の一つ)であるが、外力が強くなるとこの比は環境の温度に一致しない。私は系のゆっくりした動きを摂動計算で取り出し、アインシュタイン関係式の破れを表す拡散係数と微分易動度の比が粗視化された粒子の位置の分布関数に現れる量であることを示した。つまり、拡散係数と微分易動度の比は粗視化された世界の温度の役割を果たす。 ところで、上述の結果はフォッカー・プランク方程式の摂動計算によって得られたが、同じ系の粗視化を「周期ポテンシャルが粒子に及ぼす力の有限時間平均を分解する」という一風変わった視点からも研究してみた。非平衡定常状態では、この周期ポテンシャルの及ぼす力の有限時間平均(粗視化された力)は、新しく発見された力の分解条件によって「散逸力+ノイズ+駆動力」に分解されることが分かった。この研究の成果である力の分解条件はランジュバン系のエネルギー散逸を線形応答関係式の破れで表現するHarada-Sasa equiality [Phys.Rev.Lett.95,130602(2005)]の導出に貢献することが出来た。
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Research Products
(3 results)