2005 Fiscal Year Annual Research Report
高性能低消費電力マイクロプロセッサ向け自動最適化コンパイラの研究
Project/Area Number |
05J11276
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 元信 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 低消費電力化 / ソフトウェア可制御メモリ |
Research Abstract |
今年度は、本研究の目的に沿ったプロセッサシミュレータを構築し、多くのプログラムをプロセッサシミュレータ上で実行し、プログラムの挙動と性能・消費電力の関係を明らかにすることを目標としていた。プロセッサシミュレータの構築の過程で、消費電力のうち、スタティック消費電力の温度依存性がプロセッサ全体の消費電力に無視できない影響を与えていることがわかった。スタティック消費電力の原因であるリーク電流が温度に指数的に依存しているためである。特にオンチップ記憶部分においてはこの問題は深刻である。そこで、本研究が目的とする高性能化・低消費電力化を両立するためには、温度によるリーク電流の増減を考慮に入れ、消費電力を最適化する必要があると考えるに至った。今後の研究においてもスタティック消費電力の温度依存性を考慮したシミュレーション環境を備えることは不可欠と考えられるため、プロセッサの温度を考慮にいれたシミュレータを構築した。 温度に依存するスタティック消費電力を抑える最適化手法の一つとして、ソフトウェア可制御メモリを備えたプロセッサにおいて、温度に応じてソフトウェア可制御メモリの利用率を変化させることで消費電力を削減する手法を検討した。あらかじめプロセッサ温度と、消費エネルギーを最小化するソフトウェア可制御メモリ利用率の関係をコンパイル時に静的に求めておき、プログラム動作中にその利用率をプロセッサチップの温度にあわせて動的に変化させ、常に消費電力を最小にする手法を提案した。初期評価の結果から、プログラム実行中のプロセッサ温度によらず一定のソフトウェア可制御メモリを使用した場合に比べ、提案手法ではプロセッサ全体で最大数%の消費電力を削減できることがわかった。さらに、今後のプロセス技術の進歩によりスタティック消費電力の寄与が大きくなると、提案手法の効果はより増大することもあきらかとなった。
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