2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11363
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺本 央 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 半古典動力学 / 空間回転対称性 / モード選択性 / 非統計的な反応論 / 量子力学的効果 |
Research Abstract |
本年度は、おもに空間回転対称性がもたらす運動論的効果の量子力学的研究、および、分子にねらった構造転移反応を起こさせるためにはその分子の平衡構造周りのどのような振動モードを励起すればよいのかを解明すること、の2点に取り組んで参りました。 まず、空間回転対称性の運動論的効果は現在までLittejohnら、柳尾ら、および申請者によってこれまでに古典力学的には研究されて参りましたが、その旦子力学的な側面に関しては知られてきませんでした。そこで、申請者はその効果が量子力学的にはそのように現れるのかを調べるために、半古典動力学にその空間回転対称性の効果を取り込むことをまず考えました。このように半古典動力学に空間回転対称性の効果を取り込むという試みは、Creaghらによってなされて参りましたが、その先行研究の一つの問題点は、CreaghらがGutwillerのトレース公式というものに依拠しているということであります。このトレース公式には二つの問題点がありまして、一つはこの公式が完全にカオス的な系にしか用いることができない点、もう一つはこの公式の計算には周期軌道を計算する必要があるのですが、一般的に多自由度カオス系に於いてそのような周期軌道を計算するのは困難であるという点です。以上の2点から申請者はまずトレース公式に依拠しない方法論を、波動関数は位相部分かけるプランク定数に対する解析関数によって記述することができるというWKBの素朴な精神に基づいて構築した。次に、空間回転対称性の量子力学的効果を調べるために、空間回転対称性を課した半古典動力学とそうではない半古典動力学から自己相関関数を経て計算されるエネルギー固有値を比較したところ前者の方が同じ条件下で正しい量子力学的エネルギー固有値を予言し、しかも背後に現れるノイズなども小さいということがわかりました。このことは、空間回転対称性の量子力学的効果を考える上で示唆を与えるもので、しかも、現在まであまり意識されてこなかったこのような空間回転対称性の効果を半古典動力学に取り入れることが重要であるということを示しています。 次に、申請者は、近年のモード選択性を示す実験結果、つまり、励起エネルギーは同じだが励起される振動モードによって分子の最終生成物比が異なる、に触発されて、ある特定のモードを励起することによって分子の構造転移反応を促進させることは可能なのか?ということと、可能であればその特定のモードをどのように見つけたらよいのか?という2つの問いに答えられるような理論を構築いたしました。
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Research Products
(2 results)