2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11366
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 匡 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 蛍光プローブ / 光誘起電子移動 / 酸化ストレス / ニトロ化ストレス / パーオキシナイトライト |
Research Abstract |
蛍光プローブとは,標的分子との反応により蛍光強度等の蛍光特性が変化する機能化された蛍光色素である.これを用いたバイオイメージング法は,細胞内に存在する生理活性物質の動的挙動とその生理的な役割の理解のために,極めて有用な手段である.本研究の目的は,実用的な蛍光プローブを合理的な手法で開発することにある.本研究ではまず,論理的な背景に裏付けられた蛍光制御法を実験的に見いだすことで,合理的な蛍光プローブ設計法の確立を行った.私はこれまでに,フルオレセインが蛍光団に対する光誘起電子移動のみならず,蛍光団からの光誘起電子移動によっても精密に制御可能であることが見出し,これは分光学的手法によって実験的に証明している.さらに,この原理に基づくことでフルオレシセインを母核としたプローブの設計を行った.開発した"酸化ストレス検出プローブMTM-CF"は,酸化剤であるpermolybdateの添加により著しく蛍光性が増大した.このことにより,確立した蛍光制御原理の有用性が示された. 次にこれらの知見を応用し,ニトロ化ストレス特異的蛍光プローブを開発することを計画した.ニトロ化ストレスは,パーオキシナイトライト等に代表される活性窒素種によって引き起こされることが知られており,近年,神経細胞死等の種々の病態との関連から注目を集めている.しかしながら,これを選択的に可視化可能なプローブはなく,新たなプローブの開発が望まれていた.本研究では,生体内ニトロ化ストレスを高選択的に検出可能なプローブを開発すべく,新規蛍光プローブの設計を行った.蛍光色素の分子構造を確立した蛍光制御原理に基づき最適化することで,有機溶媒中においてニトロ化試薬との反応により蛍光性が増大するプローブを開発することに成功した.今後このプローブを基に分子を更に改良することで,生体内ニトロ化ストレスの可視化を可能とする蛍光プローブの開発につながると考えている.
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