2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11392
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 純 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Fyn / Src型チロシンキナーゼ / 水頭症 / 脳発生 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
本研究の目的は大脳の発生過程におけるFynチロシンキナーゼを介したチロシンリン酸化反応の生理的意義を明らかにすることである。申請者はごれまでにC57BL/6を遺伝的背景として持つFyn欠損マウスが水頭症に至ることを見いだしていた。今年度の研究過程では以下の研究を行い、成果を得た。 1)発生期の大脳において発現するマーカータンパク質の発現量を網羅的に調べた。その結果、オリゴデンドロサイトのマーカーはFyn欠損大脳において顕著に減少し、またアストロサイトのマーカーは顕著に増加することを見出した。一方で、興奮性および抑制性神経細胞のマーカーの発現量に変化は見られなかった。これらの結果は、脳切片の免疫染色でも確かめられ、特に脳梁や内包軸索などで顕著であることが分かった。したがって、Fyn欠損脳では脳発生期にオリゴデンドロサイトの分化異常が引き起こされ、軸索の維持や生存に必要な機能が損なわれることを指示した。初代培養したFyn欠損アストロサイトに増殖脳の増加は見られなかったことから、Fyn欠損脳で見られたアストロサイトマーカーの増加は軸索の損傷に応答したastrogliosisであると考えられた。 2)L1のTyr1229のリン酸化を特異的に認識する抗体を複数作製した。これらの抗体はHEK293T細胞に発現させたL1のチロシンリン酸化をウエスタンブロットにおいて感度良く認識したが、胎生後期の野生型脳から抗L1抗体を用いて精製したL1免疫沈降物とは反応しなかった。したがって、L1のTyr1229のリン酸化は脳内においては非常に低いと考えられた。 3)水頭症の発症機構における遺伝子発現の差異を知る目的で、生後6日目の野生型脳、水頭症の発症がまだ見られないFyn欠損脳、および水頭症を発症したFyn欠損脳をそれぞれ複数個体から回収し、これらの半球は組織化学的解析に用い、半球を用いてマイクロアレイ解析を行った。
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