2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11392
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 純 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | Fyn / Src型チロシンキナーゼ / 水頭症 / 脳発生 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
本研究の目的は大脳の発生過程におけるFynチロシンキナーゼの機能の生理学的意義を明らかにすることである。申詰者はこれまでにC57BL/6を遺伝的背景として持つFyn欠損マウスが水頭症を発症することを見出した。 1)水頭症の発症機構における遺伝子発現の差異を知る目的で、生後六日目の野生、およびFyn欠損マウスから大脳皮質をそれぞれ複数回収し、右半球は組織化学的解析に用い、左半球を用いてマイクロアレイ解析を行った。その結果、水頭症を発症したFyn欠損脳ではOPN, c-fos, GFAP, TMSF4,A2Mなど、アストロサイトやマクロファージに発現する遺伝子群の発現量が増加していることを見出した。また、real-time PCRを用いて発現量の定量化を行い、上記遺伝子の発現量が水頭症を発症したFyn欠損マウスで有意に高くなっていることを確認した。病理切片の組織像とOPNの発現量を比較したところ、薄化が進行したFyn欠損個体においてより顕著にOPNの発現量が上昇していることを見出した。OPNは多発性硬化症の病変部位や、脳損傷部位で発現が上昇することから、Fyn欠損マウスにおいては脳発生の異常から組織損傷が起きていることが示唆された。 2)病理切片の組織染色像を作成したところ、約50%のFyn欠損マウスは野生型より薄い大脳皮質を形成していることが分かった。免疫組織染色およびIn situ hybridizationを行ったところ、薄化したFyn欠損大脳ではオリゴデンドロサイトの形態形成が不全であり、また数も減少していることを見出した。一方で、大脳皮質の薄化の初期においては神経細胞層の位置はほぼ保存されていた。したがって、Fyn欠損マウスに見られる水頭症の原因は、生後のオリゴデンドロサイトの分化異常によってもたらされた神経軸索の変性・神経細胞死であることが推察された。
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