2005 Fiscal Year Annual Research Report
トゲウオ亜目魚類の繁殖行動における多様性進化の分子生物学
Project/Area Number |
05J11450
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川原 玲香 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | トゲウオ / 糊状物質 / 営巣 / 粘液状物質スピジン / 分子進化 / イトヨ / 分子系統 / ミトコンドリアゲノム |
Research Abstract |
イトヨは古くから行動学の実験生物としてその創始と発展に貢献し、現在でも進化学などの分野で膨大な研究がなされている。このイトヨを含むトゲウオ亜目魚類全体に着目すると、営巣の有無、その形態の多様性など、様々な繁殖様式がみられる。営巣する種のみで腎臓から粘着性物質スピジンの分泌が確認されているが、この物質は巣の形状、材料によって性質が異なる。本研究では、トゲウオ亜目全体を対象として、営巣という行動形質に直接関わるこの粘着性物質を分子生物学的な手法を用いて比較し、得られた知見をさらに過去の行動学を中心とした先行研究結果とあわせて考察することで、保育行動の進化を究明することを目的としている。 本年度はまず、国内外の生息地に赴き標本採集を行った。具体的には、トゲウオ亜目魚類の繁殖期である5月末から6月末にデンマークに、6月末に北海道に採集旅行を行い、性成熟した標本を採集した。並行して、分子生物学的実験のために必要な器具や消耗品を購入し、実験を行うのに適した環境を整えた。 採集した標本からDNAを抽出し、ミトゲノム全塩基配列に基づく解析により、トゲウオ亜目魚類の系統関係を明らかにした。現在その結果についての論文を執筆中である。 イトヨにおいては、抽出したRNAから作製したcDNAを用いて粘着性物質スピジンをコードする遺伝子を同定し遺伝子数、配列情報から得られるドメイン構造など、遺伝子レベルでの性質の違いを調べた。その結果、スピジンをコードする遺伝子が過去の報告よりはるかに多くのコピーが含まれる遺伝子ファミリーを形成していることが明らかになった。データベース検索によりスピジンの類似遺伝子を探索し、トラフグ、ミドリフグ、ゼブラフィッシュでそれぞれひとつずつホモログ配列を同定した。また、既知の遺伝子としてはムチン遺伝子ファミリーと近縁であることを明らかにした。これらの結果を論文としてまとめた(GENE, in press)。
|
Research Products
(1 results)