2006 Fiscal Year Annual Research Report
グルタミン酸による脳機能発現及びその調節機序の解明
Project/Area Number |
05J11569
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安本 史恵 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経 / グリア / カルシウムイオン |
Research Abstract |
胎生期に、脳はその機能・形態をダイナミックに発達させる臓器であるが、脳の発達を推し進める現象として、細胞内カルシウム濃度の波状変化、カルシウムオシレーションが知られている。一方、生体から取り出した神経細胞をシャーレの中で高密度培養すると、in vitroであるにも関わらず、生体において生じるカルシウムオシレーションと頻度・波形とも非常に類似したオシレーション(カルシウムスパイク)が自発的に生じることが知られている。つまり、生体の脳発達に不可欠な現象、オシレーションを、培養した細胞においても生じさせることができるわけであり、培養細胞のカルシウムスパイクは生体のオシレーションを反映するとされている。この発達期に特徴的に出現するカルシウムオシレーションについて申請者は、グルタミン酸を主軸として限られた濃度の範囲(カルシウム・グルタミン酸両者共)で効果的に利用するために発生すると考えており、その仮説の証明に迫る以下の知見を得た。 本年度は昨年度に引き続き、従来、神経細胞を支持する細胞とされてきたアストロサイトを、より主体的な活動を担う存在として捉え、神経細胞カルシウムスパイクに対するアストロサイトの役割の検索を深めた。昨年度に得られた、「アストロサイトのグルタミン酸除去作用を阻害した場合、神経細胞スパイク頻度が二倍近く増加した。」という事象を元に、本年度は以下の成果を得た。 アストロサイトは神経細胞によりシナプスに放出されたグルタミン酸を回収することによって、 I)回路網形成が未熟な神経アストロサイト共培養系では、神経細泡カルシウムスパイクの「発生の抑制」を、 II)成熟回路網を形成した共培養系では、神経細胞カルシウムスパイクの「頻度抑制」を行っていることを明らかにした。 特に本年度は、I)II)ともに、薬理学的方法だけではなくRNAi法によっても確認を行い、より信頼度の高い成果とすることが出来た。論文発表は特別研究員採用期間に間に合わなかったが、1・2ヶ月以内には公表の予定である。 平行して行っている、得られた成果をヒトに外挿するため、遺伝子配列などがよりヒトに近い実験動物であるサル類由来の脳細胞培養系における研究も論文発表間近となる完成度の高い成果を得ることができた。論文発表は特別研究員採用期間に間に合わなかったが、1・2ヶ月以内には公表の予定である。
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