2005 Fiscal Year Annual Research Report
チラコイド膜脂質が光化学系およびII複合体の構築に果たす機能
Project/Area Number |
05J11578
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桜井 勇 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光合成 / 光化学系II複合体 / チラコイド膜 / チラコイド膜脂質 / ホスファチジルグリセロール / 表在性タンパク質 / Mnクラスター / ラン藻 |
Research Abstract |
ホスファチジルグリセロール(PG)は、光合成の初期反応が起こるチラコイド膜において唯一のリン脂質である。これまでに、PGが光合成生物において必須要素である事は示されているが、PGが果たす機能の具体的メカニズムについてはほとんど解明されていない。 本研究では、PG合成能を欠損するラン藻の変異株を用いて、光化学系II(PSII)複合体におけるPGの機能の解明を目的とした。PG添加培地で培養された変異株を、PGを含まない培地に植え継ぐと、細胞分裂にともないチラコイド膜におけるPG含量が低下する。PG含量が低下した変異株よりPSII複合体を精製し、その特性を野生株のものと比較する事で、PGがPSII複合体の構築にどのように関与しているかを明らかにした。 チラコイド膜においては14%程度を占めるにすぎないPGであるが、PSII複合体では、全脂質の30%近くに達する事が、野生株のPSII複合体を用いた脂質分析から明らかとなった。一方、変異株のPSII複合体では、PG含量が野生株に比較して、およそ50%程度であった。また、変異株のPSII複合体は、多くが二量体でなく、単量体であったことから、PSII複合体の二量体化におけるPGの重要性が示された。また、変異株のPSII複合体は、野生株の50%程度の酸素発生活性を有するのみであり、そのタンパク質組成を調べると、酸素発生をつかさどるMnクラスターの安定化に必要な、表在性タンパク質の多くが解離している事が明らかとなった。Mnの含量を分析したところ、変異株のPSII複合体では、野生株に比較して25%程度減少しており、Mnクラスターが不安定化しているものと推測された。また、PSII複合体に結合せず、チラコイド膜ルーメン内に蓄積していた表在性タンパク質は、PGによって複合体に再結合する事が示された。 これらの結果から、PGはPSII複合体の主要な構成成分であり、Mnクラスターの安定化に必要となる表在性タンパク質の結合を介して、PSII複合体の形成に重要である事が明らかとなった。
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