2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞骨格調節タンパクとこれの時・空間制御因子としての脂質シグナルの解析
Project/Area Number |
05J11594
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
及川 司 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 細胞骨格 / イノシトールリン脂質 / WASPファミリータンパク質 |
Research Abstract |
近年、粘菌や好中球から繊維芽細胞にいたる様々な細胞の方向性を持った遊走が、走化性因子のわずかな勾配を感じて活性化されたPI3-キナーゼとその産物のひとつ、PIP3から始まるシグナルによって起こることが分かってきている。一方でGFPを融合させたAktのPHドメインを用いてPIP3の局在を可視化すると、この脂質は遊走細胞の先端に局所的に産生されていることが明らかになり、イノシトールリン脂質が細胞の極性や遊走に積極的に関与していることが明らかになっている。研究代表者はこれまで細胞の移動先端部で活性化され、アクチン重合を促進し細胞に駆動力を与えるWASPファミリータンパク質のひとつ、WAVE2がいかにして活性化されるのかということを解く過程で、イノシトールリン脂質との結合を見出した。本研究ではイノシトールリン脂質結合の性質を明らかにし、邸WASPによる浸潤突起形成やWA〜Eによる葉状仮足形成、及び方向性を持った細胞遊走へのイノシトールリン脂質の関与を解明することを目的としている。浸潤能の高いがん細胞に多く見られる浸潤斑と呼ばれる浸潤突起は、N-WASPがその骨格であるアクチン重合において主要な役割を果たしている。一方、様々なイノシトールリン脂質結合ドメインを用いて細胞内のイノシトールリン脂質の局在を可視化したところ、PI(3,4)P2が浸潤斑に強く極性を持って局在していた。リボソーム法やDot Blot法により、各種イノシトールリン脂質とN-WASPとの結合特異性を検証したところ、NLWASPは特定のイノシトールリン脂質とは強く結合しなかった。一方、N-WASPとともに浸潤斑に局在するアダプタータンパク質、Tks5/FISHはN-WASPやdynaminと結合し、さらにいくつかのイノシトールリン脂質とも結合することがわかった。これらのことから、N-WASPはその結合タンパク質であるTks5/FISHと協調してイノシトールリン脂質による制御を受けていることが示唆された。またRNAiによるTks5/FISHやN-WASPの発現抑制実験から、浸潤突起ができるメカニズムとして、(1)focal adhesionにおけるPI(3,4)P2やPI(3,4,5)P3の集積、(2)Tks5/FISHとN-WASPを含む複合体の集積、(3)N-WASPによるアクチン重合、という時間、空間制御が行われていることが示唆された。
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Research Products
(1 results)