2005 Fiscal Year Annual Research Report
転写の忠実度の維持機構の遺伝生化学的解明とストレス応答における役割
Project/Area Number |
05J11605
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 宏史 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 転写の忠実度 / 校正 / 転写伸長速度 / RNA polymerase / 酸化型ヌクレオチド / 酸化ストレス / 分子遺伝学 / 酵母 |
Research Abstract |
転写の忠実度の低下は、機能を失ったタンパク質のみならず、時としてドミナントネガティブな作用をもつタンパク質の生成の原因となる。しかしながら、転写エラーを防ぐ機構や忠実度の低下が細胞に及ぼす影響に関してはほとんど分かっていない。 これまでに私は、転写校正を促進する転写伸長因子S-IIならびにRpb9が、酵母細胞内での転写の忠実度の維持に寄与していることを分子遺伝学的解析により明らかにした。さらに、転写の校正機構が酸化ストレス下での細胞増殖に必須であることを見い出した。酸化によって生じるヌクレオチドが転写反応の基質としてRNA中に誤って取り込まれることから、校正機構が酸化型ヌクレオチドによるエラーを防ぐ役割を果たしている可能性が考えられる。 本年度では、Rpb9が校正の促進機能ではない新規の機能によっても忠実度の維持に寄与し、さらに、その機能も酸化ストレス下での細胞増殖に必須であることを見い出した。すなわち、Rpb9は二つの機構によって忠実度の維持ならびに酸化ストレス耐性に働いていることを明らかにした。 また、転写の忠実度の維持に関与する新規因子の同定を試みた。酸化ストレスに対する耐性度を指標として忠実度に関与する因子を酵母遺伝子欠損株群を用いて探索した。その結果、耐性度に異常を示す株が複数得られ、その中で、SPT4遺伝子欠損は酸化ストレスに対してむしろ耐性を導くと同時に忠実度の上昇をもたらした。Spt4は転写伸長速度を上昇させる機能を有する。そこで、伸長速度の忠実度に与える効果を検証した。その結果、伸長速度を低下させる薬剤または遺伝子変異(RNA polymeraseの変異体)が忠実度の上昇を導くことを見い出した。以上の結果から、伸長速度の低下は忠実度の上昇を導くことがわかった。したがって、忠実度を維持する上では、適切な伸長速度を保つことが重要であると考えられる。
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Research Products
(1 results)