2006 Fiscal Year Annual Research Report
転写の忠実度の維持機構の遺伝生化学的解明とストレス応答における役割
Project/Area Number |
05J11605
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 宏史 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 酸化的ストレス / 転写の忠実度 / S-II / RNA polumerase / Rpb / 酵母 / 転写伸長 |
Research Abstract |
本年度に私は、転写の忠実度を維持することが酸化的ストレスへ対応するために亜要であることを見出した。さらに、忠実度に異常を来す変異体の探索に酸化的ストレス感受性を指標とする方法が有効であることを明らかにした。 私は既に、酵母細胞内において、転写仲長因子S-IIならびにRpb9の両方が転写の忠実度の維持ならびに酸化的ストレス下での細胞の生存に必要であることを明らかにした。本年度では、転写の忠実度と酸化的ストレス感受性との関連性を検証するために、RPB9欠揖株が示す酸化的ストレス感受性のサプレッサー変異株を探索した。8株の酸化的ストレス耐性株が単離され、そのうち忠実度の回復が見られた株が3株という高頻度で出現した。忠実度の回復が見られた変異体の原因遺伝子変異は、RNA polymerase IIのcatalytic subunitの一つであるRpb1の変異であった。この変異は、これまで明らかにされたRNA polymeraseのX線構造解析の結果からは、忠実度に影響することを予想することが困難なアミノ酸残基である。すなわち、これまで明らかにされていない新規な機構に関与していると考えられる。なおかつ、生体内で実際に忠実度の維持に関与すること、ならびに細胞の表現型に影響するという二つの点において、これまでに類例のない非常にユニークなものである。したがって、忠実度に異常を来す変異体の探索において、酸化的ストレス感受性を指標とする方法が有効な手段であると考えられる。 本研究で私は、転写の忠実度に影響を与える変異体を遺伝学的に取得する方法を初めて提示した。さらに、生体内で転写の忠実度が極めて高く維持されている理由は、酸化的ストレスへの対応にあると思われる。酸化的ストレスに対して生体がその細胞機能を破綻から守る機構を理解する上で、転写の忠実度は考慮すべき点であると考えられる。
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Research Products
(1 results)