2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11660
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永澤 済 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 言語学 / 日本語学 |
Research Abstract |
主に中世から現代の日本語資料の調査に基づき研究を進めた。得られた主な成果は次の通りである。 1.【漢語動詞自他体系の変化】近代漢語動詞の自他体系は現代と異なり、和語動詞とも異なる。どこが違い、なぜ違いが生じるのかの解明は、言語の普遍性、日本語の個別性に迫ることにつながる。本研究では、文献・コーパス等の調査から漢語動詞の体系変化を追った。その結果、変化は近代自他両用動詞の一部にのみ起こったこと、変化の方向は、自動詞専用動詞への変化と他動詞専用動詞への変化の2系列であることがわかった。前者は、他動詞としての存立条件が厳しくなったこと、後者は、語義変化により人為的行為だけを表す語となり、自動詞としての存立条件から外れたことによるとみられる。前者が後者より優勢である要因として、前者は接辞「-させる」による「他動詞化」が可能なのに対し、後者は「自動詞化」を担う形式が日本語にないことが考えられる。 このような変化は、漢語が日本語への定着度を増すなかでの語義・用法の限定化と捉えられる。(論文発表予定) 2.【副詞の意味・用法変化】副詞はときに意味や用法を著しく変化させるが、そのような現象は人間の捉え方の反映として興味深い。本研究は日本語副詞「明らかに」をケーススタディに、中古において「a光が明るい/b陰が無い/c表立って/dはっきり知覚される」の意が並存していた時代から、中世・近世を経て、明治期、文副詞用法が成立し、1920年代頃:を境に様態副詞用法と勢力逆転し現在に至るまでの変化を、詳細な用例分析から追った。(語彙・辞書研究会第29回研究発表会,2006年6月口頭発表) 以上の他、東京大学等に一時保管されている明治前期民事判決関係資料、奈良県西大寺の文書などを閲覧・調査し、興味深い用法の実例を得た。今後、他の資料とも併せさらなる分析を行い、論文にまとめる予定である。
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