2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11677
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲村 一隆 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アリストテレス / 分配的正義 / 国制 / 混合政体 / 共和主義 / 政治学 / フロネーシス / 倫理学 |
Research Abstract |
本研究の目的はアリストテレスの知慮(フロネーシス)と呼ばれる知性の内実を取り上げることである。2007年度はその政治的な側面を取り上げることを試み、とりわけ分配の問題について考察した。というのも、政治とは結局のところ、政治権力、富、教育、名誉などの社会的な財を分配することだからである。 本研究は社会的な財の中でも権力の分配について考察した。アリストテレスの政治哲学の課題の一つは多数者の政治参加をどのような形で認めるかという問題である。これに対し本研究は、アリストテレスに従って、人間の行為に関する領域においては、数学などとは違って、多数者の知識の集合を認めた。というのも、アリストテレスには「行為は個別的であり、その正しさはあらゆる角度から検討しなければならず、一つの点でも見落としがあるならば正しい行為から逸脱することになる」という認識があるからである。また行為については「実行すること」と「評価すること」は異なる、というアリストテレスの視点を取り上げ、多数者には政策を「実行すること」は向いていないがそれを「評価すること」は向いているという形で、民会員や陪審員として政治参加する道があることを提示した。さらに本研究は「実行すること」と「評価すること」との違いに関する認識が、モンテスキューの三権分立論やJ.S.ミルの代議制統治論に多大な影響を与えていることを指摘した。これによりアリストテレスの政治哲学は行為に関する彼の優れた視点から現代でも有益なものであることを明らかにした。この研究については「分配的正義とアリストテレス国制論の基礎」『政治思想研究』の中にまとめ公表している。
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Research Products
(2 results)