2005 Fiscal Year Annual Research Report
セーフガード制度の妥当基盤-国際経済法秩序における自由化概念の現代的意味-
Project/Area Number |
05J11682
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北村 朋史 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国際自由貿易体制 / セーフガード制度 / 事情変更原則 / 構造調整 / WTO紛争解決手続 |
Research Abstract |
1年目の本年は、特に一般セーフガード制度の制度趣旨に関する理論研究及びWTO紛争解決手続における同制度の解釈実行の分析・評価に力を注いだ。具体的には、以下の3つの研究課題を設定し、以下のような成果を得た。 まず第1に、セーフガード制度の存立の背景である国際自由貿易体制そのものの国際法規範としての規制原理について、特にGATT体制からWTO体制への移行にともなう規律構造の変容の意義の解明を中心として、動態的な視点から分析した。その結果、GATT体制はその脆弱な規律構造から「共存の国際法」あるいは「契約法パラダイム」によって理解されるべき国際法秩序であったのに対して、WTO体制は「協力の国際法」あるいは「刑事法パラダイム」によって理解されるべき国際法秩序へと変容したことが導出された。 第2に、セーフガード制度の制度趣旨について、上記国際自由貿易体制の規制原理の理解をモチーフとして、特にGATT19条及びセーフガード協定の規定構造とその成立の歴史的文脈の相違に着目して、実証的に分析した。その結果、GATT19条セーフガード制度が事情変更原則という国内契約法上の原則のアナロジーによって理解されるべき制度であったのに対して、セーフガード協定に基づく新たなセーフガード制度は経済効率性の概念に依拠した第1次規範へと変容したことが導出された。 そして第3に、セーフガード制度の制度趣旨に関する上記研究の成果をもとに、WTO体制成立以来提出されたそれぞれ8件及び6件に及ぶパネル報告と上級委員会報告の内容及び意義について分析・評価した。その結果、それらパネル報告及び上級委員会報告にみられる極めて厳格な解釈実行は、セーフガード制度の制度趣旨の変容の必然的な帰結であり、実定法規の規定内容及びその制度趣旨に忠実な解釈実行として肯定的に評価されるべきことが導出された。
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