2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11685
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古泉 達矢 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 阿片 / 国際関係 / 香港:台湾:澳門:イギリス / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
平成18年度においては、前年度の調査において着目した香港における阿片商社に加え、香港における阿片販売請負人の活動に焦点を当て、香港に長期滞在して研究を進めた。 香港においては、香港大学亜洲研究中心のVisiting Scholarとして滞在し、主に香港大学、および香港公共梢案館1に所蔵されている史料を閲覧した。長期にわたる滞在を経て、香港の研究には欠かすことのできないイギリス植民地1省の公文書をはじめ、現地の文書館にのみ所蔵されている各種契約書や、香港において出版された各種新聞、香港商工会議所関係文書、および裁判関係史料などを幅広く閲覧することができた。この結果、昨年着目したネマジ商会(H.IM.H.Nemazee and Co.)の活動についてもより幅広い知見を得ることができた上、香港で阿片の販売に従事していた各商社の、中束から極東に至る広汎な活動の一端にも触れることができた。他方、これらの文書の読解を通じて、香港において阿片の小売を受け持つていた阿片販売請負人は香港在住の華僑のみならず、マカオやシンガポール出身の華僑によっても担われていたことを理解した。これらのイギリス本国出身者ではないものの、イギリス帝国内において広汎な商業活動を展開した商社・商人の活動を追うことは、従来とは異なる立場から極東におけるイギリスの利権・商権を捉えなおす視座を与えるものであろう。 また香港滞在中は、香港と隣接するマカオをはじめ、シンガポール、上海へ調査に赴き、各地の文書館に所蔵されている一次史料の閲覧、および収集に努めた。まずマカオにおいては、澳門歴史梢案館、民政總署大樓圖書館などを利用し、同地に所蔵されている政庁関係文書、新聞などを通じて、マカオの阿片問題に関する知見を深めた。マカオは経済的に香港と密接な関係を有するが、香港に着目した従来の歴史研究では、マカオを十分に考察に含める傾向が少なかった。しかしながら、両地が地理的に近い関係にあり、双方とも中国本土とは統治体制の異なる植民地である上、相互に異なる宗主国を持っていたという事実は、これらの両地を往来して活動を行っていた商社・商人にとって重要な意味をもっていた筈である。この点を追求し、マカオと香港における阿片政策の接点と相違を明確にするため、香港から帰国後の平成19年1月末から2月上旬にかけてリスボンの外交史料館、国立文書館などで調査を行い、史料を収集した。 シンガポールでは、シンガポール国立文書館、シンガポール国立大学図書館を利用し、ネマジ商会の活動、および同地出身の香港における阿片販売請負人に関する資料を捜索した。また上海では上海市梢案館にてネマジ商会の上海支店に関する資料を閲覧した。両地における史料収集は、香港で活動していたにも関わらず、香港に所蔵されている史料からは窺うことの出来ない商社・商人の姿を映し出すものであり、研究に資することであった。
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Research Products
(1 results)