Research Abstract |
パーソナリティの一部である気質は,人格障害や抑うつ,不安など様々な精神疾患の素因としてその生起に寄与し,薬物治療の効果の個人差を予測することが知られているので,生物学的に妥当なパーソナリティ・モデルを検証することは,人格障害や精神疾患のメカニズムの解明・予防,個人のパーソナリティに即した適切な治療に繋がる点で意義がある. 今年度は,Cloningerの気質と性格の7次元モデル(Cloninger et al.,1993),Grayモデルに基づく気質モデル(Gray,1982)に,これらのモデルでは測定されていない可能性の高い気質次元や性格の5次元モデルを検討に追加して,(1)ライフ・イベントがこれらの次元の安定性に与える影響(高橋ら,2005,パーソナリティ研究),(2)不安と怒りの生起に関連した素因ストレスモデル(高橋ら,2005,日本パーソナリティ心理学会,優秀大会発表賞),をそれぞれ大学生を対象とした横断調査によって検証した.また,不安を客観的な実験課題を用いて測定する試みとして,Implicit Association Test-Anxiety(Schmukle & Egloff,2002)の日本語版を作成した(高橋ら,2005,日本心理学会). また,双生児データ解析技術修練のため,ロンドン精神医学研究所(Institute of Psychiatry, King's College London)のTwin Model Fitting講座に参加し,その技術に基づいて,(1)Cloningerモデルに基づいた気質次元の遺伝的構造(Takahashi et al.,2005,国際行動遺伝学会),(2)抑うつと不安という併発性の高い2つの症状(高橋ら,日本双生児研究学会)について行動遺伝学的解析を行い,各学会にて口頭発表を行った.
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