2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11691
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田部 智子 (京極 智子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国際法 / 国際経済法 / GATT / WTO / 繊維貿易 / 農業貿易 |
Research Abstract |
本年度の研究では、繊維分野と同様にガットからの逸脱があった農業分野を検討し、当該分野における国際貿易制度の変容の過程等を考察した。 具体的には、農業分野における国際貿易制度の変容の過程を検討し、更に、WTO発足時に締結された農業関連分野を規律する特別協定である衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)について制定の歴史や紛争処理の現状などを調査した。 農業分野では、ガットの「プラグマティズム」の発現としてガット規定により幅広い貿易制限が容認されていたこと、ガットの事実上の適用外と言われるほど各国が多様な貿易制限を行っており、複雑な利害関係と当事国の組み合わせのため、繊維分野のような多国間による「秩序ある貿易の発展」のための枠組みが形成されることはなかった。一方、繊維分野では、無秩序な輸入増加による国内繊維産業への影響の抑制を目指す先進国と、工業化の第一歩として繊維産業を育成するため等、先進国による無制限な貿易制限の発動を抑制したい途上国、各々の思惑が貿易制限を制度化するという点において一応の合意に達しうるレベルまで接近したため、独自の多国間の枠組みが可能となった。この点、他分野と比べ、繊維分野は、特徴的と考えられる。 一方、GATT体制において数次に渡る貿易交渉の結果関税が引き下げられ、次第に非貿易障壁の国際貿易に与える悪影響に焦点が集まった。SPS措置もその一つとして問題視され、ウルグアイ・ラウンドでは、農業交渉の一部として当該措置が農産物貿易に及ぼす影響を最小限にすることを目指して交渉された。SPS協定は、各国の衛生植物検疫措置(SPS措置)を採る権利を認めつつ、そうした措置が国際貿易を必要以上に制限することのないようにすることを目的とする。これまでSPS協定が問題となった紛争は4つ起こっており、基本的に国内主権事項であったSPS措置が国際的に問題とされるようになった。
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