2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11691
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田部 智子 (京極 智子) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国際法 / 国際経済法 / GATT / WTO / 繊維貿易 / 農業貿易 / SPS協定 |
Research Abstract |
本年度の研究では、昨年度に引き続き、研究課題であるガット/WTO体制における繊維貿易の位置付けを明らかにするために比較対照する分野として選択した農業分野における国際貿易制度の変容の過程等について、より深めた検討を行った。 具体的には、WTO発足時に締結された農業関連分野を規律する特別協定である衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)についてその制定の歴史及び紛争処理の現状についてより深く分析を進めることとした。このため、本年度夏期休暇期間を利用し、WTO事務局が所在するスイス・ジュネーブにおいて研究調査を行うとともに、OECD(パリ)及びFAO(ローマ)にてインタビュー及び情報収集を行った。SPS協定は、東京ラウンド交渉時に締結されたいわゆるスタンダード・コードを基としており、当該コードが農業分野に使用しにくかったという状況を背景として、農業交渉の一部として、衛生植物検疫措置(SPS措置)が農産物貿易に及ぼす影響を最小限にすることを目指してウルグアイ・ラウンドにおいて交渉され、締結されたものである。SPS協定は、各国のSPS措置をとる権利を認めつつ、そうした措置が国際貿易を必要以上に制限することのないようにすることを目的としている。本年度の研究においては、SPS協定についてそれが国家の権利を認めているものと不当に制限すると主張するものとに学説が分かれていることを契機として、起草過程を詳細に検討することにより、それが国家の権利を制限することを目的として起草されたこと及び主要な規定たる科学的正当性に依拠すること及び国際基準への調和の意味を明らかにした。さらに、起草時に想起されていた解釈と現在の紛争処理におけるパネル・上級委の解釈が異なることも明らかにし、これらを本年度の研究の成果として論文にまとめる作業を行った。
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