2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11694
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東 健太郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日本政治 / 象徴天皇制 / 昭和天皇 / 憲法 / 憲法改正論 / 吉田茂 / 岸信介 / 佐藤栄作 |
Research Abstract |
今年度の作業は主に、研究対象となる戦後の日本政治史や天皇制、及び憲法改正運動関係の資料収集、あるいは対象時期の新聞・雑誌等の調査が中心となった。特に天皇制や改憲問題は近年とみにリアルな政治課題として浮上し、関係図書も大量に公刊されているため、収拾に一定の労力を要した。ただ、現代の皇室問題や改憲問題に対して歴史的視点から新たな光を当てるのも本研究の目的と考えている。同時代の動向にも常に目配りを怠らないで研究を進めて行きたい。 公刊資料以外では、特に1950年代の改憲問題の関係で、国会図書館等に所蔵のマイクロフィルム史料の中からいくつかの貴重な史料を見出した。その他オーラル・ヒストリーとして、皇族に近い関係者にインタビューする機会を持ち、貴重な証言を得ている。 資料の蓄積とは別に研究内容上の特筆すべき進展を挙げると、第一に思想史的な関心を強めたことがある。これは歴代政権に対する学者・ジャーナリスト等の時評を採集して来たのが契機であるが、思想を抽象的な次元にとどまらず時評を軸に実際の政治動向と絡ませて論じれば、手法としても政治史と思想史を融合した一つのモデルとなり得るのではないかと考えている。 第二に、1950年代の憲法論議や天皇制問題を巡る論議において、アメリカとの関係で論ずる図式が、政治家間から論壇に至るまで広範に流布していたことを再認識した。戦後日本をポストコロニアルと冷戦のポリティックス、あるいはパクス・アメリカーナの文脈で論ずるのは特に思想史・社会史において近年の流行であり、本研究も期せずして一面でそうした潮流上に合流したと言えるかもしれない。ただ、先行研究と比較して本研究の政治史という立場からは、実際の政治動向に即して、より緻密に実証的に論じられるであろう。 以上の成果については、18年度以降に順次公表していく予定である。
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