2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11694
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東 健太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日本政治 / 象徴天皇制 / 憲法 / 吉田茂 / 片山哲 / 芦田均 / 鳩山一郎 / 岸信介 |
Research Abstract |
平成18年度には、公開の場で2つの成果報告を行った。1つは、査読誌『相関社会科学』第16号に投稿し、審査を経て掲載された「象徴天皇観と憲法の交錯吉田茂と芦田均を中心に」である。これは、筆者が研究対象としている時代範囲の中で、最も初期の部分にあたる。本論文で筆者は、敗戦と占領という激動の時代において、新憲法が制定され、天皇の位置付けも変化する過程において、吉田と芦田がそれぞれ重要な役割を果たしたこと、2人の天皇観や政治行動の違いが戦前来の彼らの経歴にそれぞれ由来していたことを論じた。本論文の眼目は、吉田が戦後政治における象徴天皇の位置付けの基本路線を敷いたこと、にもかかわらず、芦田のように吉田とは異なる路線を提示した政治家も存在していたこと、等を示したことである。これ以降の時期の象徴天皇制を扱う筆者の今後の研究も、大枠では本論文の見通しの上に立って行われるであろう。 もう1つの成果報告は、「戦後憲法下の天皇と首相--安保闘争に至る過程--」と題して、日本政治研究学会の研究例会において行われた。これは、片山哲から岸信介までの各政権と天皇の関係を比較検討し、時代的な展開を追ったものである。この報告が扱った時代範囲は先の論文と一部重複するが、憲法が規定する統治構造に焦点を当て、論じる枠組みを異なったものとしている。 以上のように、筆者が研究対象として掲げる、昭和戦後史を通した象徴天皇と政治の関係のうち、前半の時期に関する研究のまとめとその報告が、平成18年度の主要な達成となった。学会報告に関しては、平成19年度中に論文化する予定である。これ以降の時期(池田勇人・佐藤栄作時代以降)に関しても前年度から引き続き、諸政治家に関する史料、あるいは憲法関係の資料の収集・整理等を行っており、それらの達成については、平成19年度中に報告が行われるであろう。
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