2005 Fiscal Year Annual Research Report
多重共鳴コヒーレント励起法による励起子系の巨視的コヒーレンスの発現と制御
Project/Area Number |
05J11742
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉岡 孝高 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 励起子 / 亜酸化銅 / コヒーレント制御 / ボーズ・アインシュタイン凝縮 / Auger再結合 |
Research Abstract |
1.亜酸化銅天然結晶における黄色系列1sオルソ励起子について、電子正孔間の波数に依存した交換相互作用によって生ずるダーク励起子の2光子コヒーレンス時間を調べた。フーリエ変換限界ピコ秒近赤外パルスによる位相空間圧縮法を用いると位相空間密度の極めて高いダーク励起子を瞬時に生成できるが、これを時間差が精密に制御されたパルス対で行うことで、コヒーレントな極低温ダーク励起子集団同士を干渉させることができる(コヒーレント制御)。この手法を超流動ヘリウム温度において適用し、1光子遷移禁制のため輻射場から隔絶されたダーク励起子が250ピコ秒を超える、バルクの励起子系として特異的に長い2光子位相緩和時間を持つことを明らかにした。さらに、時間領域における干渉パターンのビート信号から、マイクロ電子ボルトオーダーの微細なダーク励起子の分裂を見いだすことに成功した。 2.亜酸化銅天然結晶における黄色系列1sオルソ・パラ励起子について、定常状態における1s-2p誘導吸収分光(CW励起子ライマン分光)を開拓した。励起子ボーズ・アインシュタイン凝縮実現の障壁とされている励起子間衝突に伴う励起子の非輻射崩壊過程は、その起源が明らかでないばかりか、崩壊レートやその温度依存性について発光測定による実験的報告に大きな食い違いがあり、統一的な見解が得られていない状況である。定常的中赤外光源を用いたCW励起子ライマン分光の開拓により、この崩壊過程の評価に必要なSN比を劇的に改善し、絶対的な励起子密度評価を可能にした上で崩壊レート・温度依存性の測定を行った。ボーズ凝縮が期待されるパラ励起子についての液体ヘリウム温度近傍での発光による評価は困難であり、この研究により初めて得られた決定的知見は崩壊の機構解明、ボース凝縮の実現にきわめて重要であり独自性の高いものである。
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