2006 Fiscal Year Annual Research Report
セラミック材料中の結晶欠陥構造と欠陥領域の原子ダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
05J11745
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 翼 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高温構造材料 / 粒界 / 界面 / 拡散 / 二次イオン質量分析法 |
Research Abstract |
高温構造材料における原子拡散はクリープや粒成長、焼結などの高温での材料挙動の素過程として重要である。中でも高次元格子欠陥における高速拡散挙動は特に重要であるが、定量的な評価が難しく、また欠陥構造も非常に複雑であるため、これまでは定性的な評価しか行なわれず、ブラックボックスとして扱われてきた。本研究では、代表的な高温構造材料の一つであるアルミナを主たる研究対象とし、粒界や転位といった高次元の格子欠陥における原子の拡散挙動の、トレーサーを用いた観察実験による定量的な評価を行っている。 本研究の特色は、我々の持つノウハウを用いて双結晶試料や高温変形試料を用いることにより、複雑な構造を持つために定量的な評価が難しかった粒界や転位の欠陥構造を任意に制御し、特定の構造を持つ粒界及び転位における拡散挙動を直接、かつ定量的に評価したことにある。その結果、粒界や転位における拡散挙動をそれぞれの原子構造と対応させて評価することが可能となった。これまでに、転位における酸素及び不純物カチオン(Ti, Cr)の拡散評価を行い、それらを比較することによって、Tiに見られる非常に高い転位拡散係数は、Tiのアルミナ中転位への偏析のし易さに起因していること、粒界拡散挙動は粒界の原子構造と強く相関しており、またカチオンとアニオンの拡散では、その相関するパラメーターが異なることなどをこれまでに明らかにしている。 また、本年度において行った新たな研究として、最新鋭の高空間分解能SIMSを用いて、双結晶中の粒界拡散挙動の可視化に成功した。この研究によって、これまでのSIMSを用いた実験では不可能であった粒界拡散の幅や粒界拡散によって粒界部に濃化した原子の粒内への染み出しの様子などを直接観察することが可能となり、粒界拡散及び、粒界拡散による物質輸送プロセスの本質的な理解を深めるためのブレイクスルーとなることが期待される。
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