2005 Fiscal Year Annual Research Report
島弧下マントルにおける交代作用に伴う揮発性元素の挙動に関する研究
Project/Area Number |
05J11760
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池端 慶 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マントル / 捕獲岩 / 揮発性元素 / 交代作用 / 包有物 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は以下である。 1.ニュージーランド北島、西南日本、伊豆諸島、イタリアエオリア諸島、米国イエローストーン周辺で採集したマントル捕獲岩、メガクリストの薄片を作成し、光学顕微鏡、電子顕微鏡、電子線マイクロプローブ等を用いて鉱物、メルト包有物の分布、モード、組成等を調べた。その結果、マントルでは硫黄はガラスや鉱物ではなく硫化鉱物(高温で安定なMonosulfide Solid Solutionや低温で再平衡に達したと考えられるペントランダイト、黄銅鉱など)の中に濃集していることが分かった。また、その分布は均一ではなく特に交代作用に伴い二次的に形成された単斜輝石の内部に集中している。この硫化鉱物の周囲には微細(1-20μm)な流体包有物が存在していた。顕微ラマン分光法によりこの流体包有物の組成を確かめたところ、二酸化炭素が主な組成であることが判明した。従ってマントル中では交代作用に伴い深部から浸透した流体により硫黄が付加されている事が予想された。 2.上記流体包有物に溶解する微量成分を非破壊で同定する為に、筑波大学のマンクロビームを用いたPIXE分析を試みた。最初に分析の初期条件を定める実験を実施した。重元素と比べ、軽元素(揮発性元素)はイオン化断面積が大きい為、入射粒子エネルギーが高い条件で最も強い特性X線が発生する。しかし入射エネルギーが高いと散乱粒子も大きくなり検出器を保護する為のフィルターの厚さを厚くする必要があり検出能力が低下する。最適な入射エネルギーは2-3MeVであったが、この様な低エネルギーでは絞ったビームが不安定になり微細な流体包有物に焦点を合わせるのは困難であった。繰り返し測定により、測定可能な最小ビーム径は約40μmであることが分かった。本研究の試料中の硫化鉱物に伴う流体包有物の大きさは最大で20μmである為、PIXE分析を行う為には更に大きな流体包有物を含む試料を探す必要がある事が分かった。
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