2006 Fiscal Year Annual Research Report
火星におけるガリー地形の形成機構と表層進化に与える影響の解明
Project/Area Number |
05J11761
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 徹之 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 火星 / 周氷河活動 / 岩石氷河 / 衝突クレータ / アマゾニアン / 中緯度地域 / 極向きの斜面 |
Research Abstract |
火星の中緯度において,衝突クレータの壁面などの傾斜面は,規則的に,極向きの斜面のほうが赤道向きの斜面よりも斜面傾斜角が小さくなっており平坦化されている.この緯度帯の極向きの斜面には,地球のガリー地形や周氷河地形に類似する地形がよく発達しており,これらの地形の発達と選択的な極向きの斜面の平坦化は,関連していると考えられる. 本研究では,この選択的な極向きの傾斜面の平坦化が起こる年代を制約するために,ヘスペリアン後期からアマゾニアン初期の表層年代を示すアルバ・パテラ地域にある77の衝突クレータの内壁の斜面傾斜角を,火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーによって得られた高解像度のMOC画像やMOLAデータ(高度データ)を用いて調査した. 結果は,アルバ・パテラ地域においても,極向きの内壁のほうが赤道向きの内壁よりも平坦化されており,選択的な極向きの傾斜面の平坦化は,現在に近い表層環境であったと考えられているアマゾニアンにおいて起こっていた,もしくは続いていた事が示された.一般的に,この平坦化はガリー地形形成などの浸食作用よって発達したと考えられているが,これら衝突クレータにおいて,極向きの内壁側のリムは赤道向き内壁側のリムと同程度に保存されており,浸食作用は平坦化にほとんど寄与していないことが示唆される.むしろ,極向きの内壁からキャビティに流れ込む形態を示す,地球の周氷河地形に類似する堆積物によって平坦化したと考えるのが妥当である. これらの結果により,火星の中緯度では,アマゾニアンにおいて活動的な周氷河作用が続いており,衝突クレータのキャビティは,現在でも氷に富んだ堆積物で満たされている可能性があることが示唆される.
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