2007 Fiscal Year Annual Research Report
火星におけるガリー地形の形成機構と表層進化に与える影響の解明
Project/Area Number |
05J11761
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 徹之 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 火星 / 自転軸傾斜角 / 周氷河地形 / 衝突クレータ / 岩石氷河 / 氷 |
Research Abstract |
火星の表層環境は、隕石重爆撃期の終わりまでの温暖湿潤な気候と、それ以降の寒冷希薄な気候の2つの状態に大別できる。これまで火星史初期の温暖湿潤な環境下における衝突クレータの修正過程に関する研究は行われてきたが、火星史後期における寒冷希薄な環境下における衝突クレータの修正過程の系統的な研究はまだ行われていない。 そこで、本研究では、火星史後期以降に形成されたアルバ・パテラ地域における直径5km以上の222個の衝突クレータの形状や形態的特徴を系統的に調査し、火星史後期における主要な衝突クレータの修正過程を明らかにすることを目的とし、衝突クレータの形状パラメータの統計学的調査および形態学的調査を行った。 中緯度地域(33゜〜52゜N)において、極向きの衝突クレータ内壁の最大傾斜角は、赤道向きの内壁の最大傾斜角よりも小さい傾向が示された。衝突クレータのキャビティの深さは、緯度が大きくなるにつれて浅くなり、とくに45゜N付近で急激に浅くなる傾向が明らかになった。さらに、衝突クレータの直径が大きいほどキャビティは緩やかに浅くなり、高緯度地域(>52゜N)では直径15km以下の小さい衝突クレータはキャビティが非常に浅いのに対し、直径15km以上の大きい衝突クレータのキャビティはある程度の深さを保持していることが示された。 火星の自転軸傾斜角の変化に対応した表層氷の安定性を推定すると、緯度約30゜Nより高緯度側の衝突クレータの極向き壁面、緯度約45゜Nより高緯度側の衝突クレータの底面には、自転軸傾斜角に関わらず氷が安定に存在することが示唆される。低緯度地域の衝突クレータの深いキャビティの様子から、ダストがただ堆積しただけでは再び大気中へ巻き上げられることが示唆される。これらの結果から、地表に堆積したダスト成分は氷によって固定され、キャビティを埋めている氷堆積物の厚さは、氷の凝結量と氷が地表付近に安定しダストを地表に固定する期間に対応しているという新しい解釈を、本研究では提案した。
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Research Products
(4 results)