2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
礒野 裕 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 弦理論 / D-brane / 弦の場の理論 / 境界状態 / idempotency |
Research Abstract |
私は、D-braneを弦理論的に記述する境界状態が、閉弦の場の理論においてある特殊な非線形関係式(idempotency)を満たすことについて、その意味や拡張を研究してきた。 従来D-braneの弦理論的記述は、D-braneは閉弦を放出、吸収する状態であるとして閉弦の理論における境界状態により行われてきた。しかしD-braneが交差するような状況を考慮すると、D-braneから「開弦」が放出、吸収されるような状況を考えることができることがわかる。その結果閉弦の場合と同様に、D-braneを開弦の放出、吸収を表す境界状態としても記述できることを発見した。このような状態を「開弦の境界状態」と名づけた。そして開弦の境界状態も、開弦の場の理論においてidempotencyを満たしている、つまり境界を二つかけて得られる状態もまた境界状態となることがわかった。以上のことから、idempotencyは閉弦、開弦のいかんにかかわらずD-braneが一般に満たしているべき関係式であることがより強固に裏付けられた。今のところボソン弦の場合についてのみ結果が得られているが、現在開弦の境界状態の記述を超弦の場合やより一般の共形場理論の場合に拡張する研究を進めている。また上記のように開弦の境界状態は交差するブレイン系に結びついているわけだが、そのような系は弦理論から素粒子の標準模型を導く際の重要なモデルになっており、その方面への応用も興味深い。以上のように、開弦においても境界状態が記述できることは、そもそもの目標であるD-braneの弦理論的記述の可能性がさらにひろがることを意味している。
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