2005 Fiscal Year Annual Research Report
Astro-E2衛星を用いた、ブラックホール周辺からの広がった鉄輝線の観測的検証
Project/Area Number |
05J11765
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 健 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | X線天体物理学 / Astro-E2衛星 / ブラックホール / 活動銀河核 / ガンマ線位置検出器 |
Research Abstract |
Astro-E2衛星が平成17年7月10日に打ち上げられた。それに伴う初期運用では、衛星に搭載された硬X線検出器(HXD)宛てのコマンドのチェックを行なうとともに、地上に降ろされたデータを迅速に解析してHXDの状態を逐一把握し、衛星チーム内に報告した。この貢献があったために、チーム全体がつねに検出器の状態を知りながら高電圧をかけていくことができ、最終的には予定通りに観測を開始することができた。また軌道上データの解析から、HXDのアナログ及びデジタル回路の設定値の最適値を決めた。この設定値がコマンドとして衛星に送られ、HXDが効率よく観測できるようになった。その後も一貫してHXDのキャリブレーションに携わり、特にバックグラウンドの推定手法の確立に大きく貢献した。 Astro-E2衛星で観測された様々な活動銀河核(AGN)のデータを解析した。おもにHXDデータの解析に取り組み、平成18年1月に宇宙科学研究所で行われた宇宙科学シンポジウムでは少なくとも5本の共著発表を行った。特にNGC4945という2型AGNを詳しく解析し、10キロ電子ボルト以上ではこれまででもっとも高精度なエネルギースペクトルを取得できたことを確かめた。この結果を平成18年3月に行われる日本天文学会で発表する。これらの解析をもとに、Astro-E2衛星にさらなるAGNの観測提案を行った。 次世代型の硬X線・ガンマ線検出器として、無機結晶シンチレータと一次元シリコンストリップ検出器を組み合わせた素子を考案し、自ら作成した。実験の結果、数百キロ電子ボルトのガンマ線をおよそ0.4mmの位置分解能で撮像することに成功した。世界的に見ても特筆すべき成果であったため、これを平成17年10月にプエルト・リコで開かれた国際学会(IEEE)で口頭発表し、論文を学術雑誌(IEEE)に投稿した(IEEE、査読中)。
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