2007 Fiscal Year Annual Research Report
Astro-E2衛星を用いた、ブラックホール周辺からの広がった鉄輝線の観測的検証
Project/Area Number |
05J11765
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 健 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | X線天体物理学 / Astro-E2(すざく)衛星 / ブラックホール / 活動銀河核 / ガンマ線-検出器 |
Research Abstract |
「すざく」衛星で観測した活動銀河核NGC4945についての成果を日本天文学会欧文誌に発表した。主な結論は、「この天体では、中心核近傍の光学的に厚い吸収・反射体が、通常考えられているよりも幾何学的に薄い」というものである。この成果は、これまで広く受け入れられてきた活動銀河核の統一描象に一石を投じるものである。その後、同じく「すざく」衛星で観測された2型活動銀河核4天体を詳しく解析した。「すざく」衛星の特長である広エネルギー帯域を活用し、いずれの天体でも数keVからおよそ100keVまでのエネルギースペクトルと時間変動を調べた。その結果、これらの活動銀河核の直接放射は冷たい物質による強い吸収をうけていることを確認し、さらに、同じ物質による反射光も検出した。直接放射と反射光の相対的な強さから、Markarian3, NGC4388という2つの天体では、吸収・反射体(トーラス)が中心核に対して大きな立体角を持っていることを示した。またCircinus銀河という天体において、吸収の強さと硬X線での時間変動、およびエネルギー収支を詳細に考察したところ、この天体の硬X線放射はトーラスによる散乱光が支配的であることを初めて示した。このことは、この天体も先の2天体と同様に、幾何学的に厚いトーラスを持つことを示唆する。いっぽう、Circinus銀河はそのブラックホール質量と吸収量がNGC4945とひじょうに近いため、この結果は、先のNGC4945のトーラスに対する示唆を裏付けるものである。以上の結果から、本研究では活動銀河核の統一描像をこれまでにない精度で検証し、それに合う銀河核とともに、逸脱するサンプルを初めて見つけた、という点でひじょうに重要である。
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Research Products
(4 results)