2005 Fiscal Year Annual Research Report
光電子分光及び磁気円二色性を用いた希薄磁性半導体の物性研究
Project/Area Number |
05J11790
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 正起 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 希薄磁性半導体 / X線磁気円二色性 / 光電子分光 / 酸化物 / 室温強磁性 |
Research Abstract |
希薄磁性半導体は非磁性半導体に磁性イオンを添加した物質であり、遍歴するキャリアのスピンと局在磁気モーメントが結合して強磁性を発現すると考えられている。この性質は電荷とスピンの自由度を扱うスピントロニクスにおいて注目を集めている。実際、この性質を用いてスピン注入などの技術が報告されているが、キュリー温度が室温よりも低いことから現実の応用には至っていない。また強磁性の発現機構について議論が絶えない。今回、我々は強磁性発現機構の解明を目指し、室温での強磁性が報告されている系Zn_<1-x>Co_xOについてX線磁気円二色性(XMCD)を用いて、Zn_<1-x>Cr_xTeについては光電子分光を用いて、ドープされた遷移金属イオンの電子構造を調べた。 Zn_<1-x>Co_xOにおいてCo L_<2,3>吸収端におけるXMCDスペクトルを理論モデルと比較することで、Znを置換したCoイオンが磁性を担っていることを見出した。また、XMCDスペクトルの磁場と温度の依存性を調べた結果、Coイオンの電子状態は一つであるにもかかわらず、一部のCoイオンが強磁性で、その他のCoイオンは反強磁性的に結合していることが示唆された。 Zn_<1-x>Cr_xTeについては、Cr 2p-3d吸収端に光のエネルギーを合わせることで、価電子帯における共鳴増大を観測した。共鳴スペクトルは、Cr 3d部分状態密度が価電子帯頂上付近に位置し、僅かにフェルミエネルギー(E_F)上にスペクトル強度をもつことを示していた。非共鳴スペクトルでは、E_Fにほとんど強度が無いこと及び試料が絶縁体であることから、E_F近傍の状態は伝導を妨げる相互作用(クーロン相互作用、電子間相互作用)により抑制されていることが示唆された。
|
Research Products
(2 results)