2006 Fiscal Year Annual Research Report
光電子分光及び磁気円二色性を用いた希薄磁性半導体の物性研究
Project/Area Number |
05J11790
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 正起 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 希薄磁性半導体 / X線磁気円二色性 / 光電子分光 / 室温強磁性 |
Research Abstract |
非磁性半導体に磁性イオンをドープした系である希薄磁性半導体(DMS)は、磁性イオン同士がキャリアを介して磁気相互作用すると考えられている。強磁性を示すDMSは、キャリアを介した強磁性磁気相互作用はキャリアの持つスピン自由度の操作を可能にする。しかしながら、強磁性DMSのキュリー温度(Tc)が室温よりも低いために応用が難しく、室温以上のTcを持つ強磁性DMSが切望されている。 II-VI族希薄磁性半導体Zn_<1-x>Cr_xTeは室温で強磁性を示し、可視光を用いた磁気円二色性から母体と磁性イオンが強く相互作用した本質的な磁性半導体として注目を集めている。今回、我々はCr濃度の異なる2つの試料に対して、XMCDの磁場、温度、入射角依存を測定することでCrの電子状態を調べた。XMCDスペクトルが光の入射角に依存していなかったことから、スピンに関して丸いd^5L電子配置が主成分であると考えられる。この様な電子配置は局所的にCr濃度が高くなることで起こると考えられ、磁気相互作用は短距離的であることが示唆される。 Fe-doped NiOは室温を超えるTcを持つ強磁性を示し、さらにLiを添加することでホールキャリア濃度を増やすと、磁化が大きくなることが報告されている。今回、我々はLi_yNi_<1-y-0.05>Fe_<0.05>Oの試料の光電子分光(PES)及びX線吸収分光(XAS)を測定したLi_yNi_<1-y-0.05>Fe_<0.05>Oでは変化が見られなかった。Fe L_<2,3> XASスペクトルはホール濃度が高くなるにつれてFe^<3+>のスペクトルに近くなっていたことから、2Fe^<2+>+h^+→Fe^<2+>+Fe^<3+>のように電子状態の変化が起こっていると考えられる。 研究計画にそって、強磁性希薄磁性半導体の電子構造に関して多くの知見を得た。今後は、角度分解光電子分光等も用いて、より詳細に電子構造を調べる。
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Research Products
(6 results)