2006 Fiscal Year Annual Research Report
中性子過剰な中重核の多核種多チャネル法を用いたインビームγ線核分光
Project/Area Number |
05J11802
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 宏 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中性子過剰核 / 中性子魔法数 / 多核種多チャネル法 / TOFスペクトロメータ |
Research Abstract |
中性子過剰な中重核における中性子魔法数の変化に対する知見を得るための研究として、2点を平行して行った。 1点目は、2005年12月に行ったTOFスペクトロメータを用いた実験のデータ解析である。実験は、液体水素標的を二次標的とし、^<70>Zn破砕片のインビームγ線核分光を行った。現在、これまでの研究を投稿論文にまとめているところである。 データの解析により、中性子過剰なTi同位体(^<58>Ti等)で未知のγ線を発見した。^<54>Ti,^<56>Ti,^<58>Tiにおいては、陽子非弾性散乱による2^+励起状態への励起断面積を求め、核内における陽子分布と中性子分布の変形が等しいという仮定の下に、これらの核の変形度を導出した。これらは、中性子過剰核において理論的に予想されていた新魔法数34の出現や従来の(擬)魔法数28,40の消失に関係する新しい情報であり、近辺の核種の励起エネルギーや変形度と合わせて比較することで、付近の核構造を理解する重要な手がかりとなる。周辺の核種の2^+励起エネルギーを比較したところ、Ti同位体(Z=22)はCr同位体(Z=24)よりも励起エネルギーが高く、これはCa同位体(Z=20:陽子魔法数)の強い閉殻性を示唆していると考えられる。 現在、Ti同位体に関する上記の研究に関して投稿論文を執筆中である。 2点目は、理化学研究所に建設したBigRIPSビームラインのビーム輸送開発に加わったことである。BigRIPSは入射核破砕反応法により生成した不安定核を分離、タギングする装置である。これは、質量数80近辺の中性子過剰核における中性子魔法数の変化を調べる実験の準備として行ったものである。 TOFスペクトロメータの開発で得たビーム輸送の知識を元に、BigRIPSビームラインにおけるビーム輸送のための計算を行い、粒子識別図における核種分離の能力向上に努めた。
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