2005 Fiscal Year Annual Research Report
単結晶薄膜を用いた光電子分光による遷移金属酸化物の研究
Project/Area Number |
05J11805
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
滝沢 優 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遷移金属酸化物薄膜 / 光電子分光 / 磁気円二色性 / ルテニウム酸化物 / 膜厚依存性 |
Research Abstract |
ペロブスカイト型酸化物は、組成や温度などの変化によって絶縁体から金属に変わるので有力なデバイスとして興味が持たれている。とりわけ、現代のデバイスの小型化に伴い、電極として、あるいはゲート絶縁体としての薄膜材料に大きな興味が集まっている。しかし、同じ物質でも非常に薄い薄膜にすることによって、これまで解明されてきたバルクの性質とは異なる物性を示すことが知られている。そこで、われわれは膜厚を制御したSrRuO_3薄膜を光電子分光で測定することによって、直接電子の状態密度を観測しその性質の解明を行った。膜厚を減少させていくに従い、フェルミ準位付近のRu4d由来の電子状態が変化していった。そして、およそ5原子層の厚さ以下になると、フェルミ準位上の状態密度が消え、SrRuO_3薄膜が絶縁体になることを見出した。このことより、電極材料としてSrRuO_3薄膜を用いる際には、およそ5原子層以上の厚さが必要であることが分かった。また、SrRuO_3薄膜は強磁性を示すことも知られており、膜厚を制御したときの磁性の変化についても研究を行った。主に磁性を担っているRu元素について直接知見が得られる磁気円二色性実験を行うことにより、膜厚を減少させていくにつれて磁性に関係する信号強度が減少し、ついには消失することを見出した。先の光電子分光実験の結果とあわせることによって、金属強磁性の性質をもつSrRuO_3薄膜の臨界膜厚についての知見を得ることができた。
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Research Products
(3 results)