2006 Fiscal Year Annual Research Report
FINUDAスペクトロメータを用いたK中間子が原子核中に深く束縛した状態の探索
Project/Area Number |
05J11828
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤岡 宏之 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | K中間子 / 原子核 / 強い相互作用 / ストレンジネス / ハイパー核 |
Research Abstract |
イタリア・フラスカティ研究法にある電子・陽電子加速器DAΦNE上に設置されたFINUDAスペクトロメータを用いた2回目の実験が、2006年10月に開始された。FINUDA実験は、DAΦNEで生成されるφ中間子の崩壊に伴う負K中間子を薄い原子核標的に静止させ、例えばΛハイパー核などのストレンジネスに関連した現象の観測を目的としている。前回の実験と比べて約5倍のビームを照射するために、実験は2007年夏まで継続する予定である。 前回の実験の解析によって、特に質量数の小さい原子核に負K中間子を静止させたときにある分岐比で強い反対向きの相関を持ったΛ粒子と陽子のペアが放出され、その不変質量は始状態に対応する負K中間子と2個の陽子の質量和と比べて大きく減少していることが分かった。この結果の解釈の1つとして、理論的に予言されているK中間子が原子核に束縛した状態の生成が考えられるが、他の解釈の可能性を否定するには至っていない。それを検証するために今回の実験では質量数の小さな原子核標的を重点的に配置した。また、他の2粒子のペア(Λ粒子と中性子、負Σ粒子と陽子)の不変質量分布を求めたところ、Λ粒子と陽子のペアと異なっていることが示唆されるが、現時点の統計では結論を出すに至っていない。これについても今回の実験の解析を行うことで、より詳細な情報が得られると期待される。 また、2005年度に製作したスペクトロメータ最内層のシンチレーションカウンターを組み立て、スペクトロメータ内にインストールした。宇宙線や実際のビームを用いて動作確認を行い、1テスラの磁場中においても正しく動作し、また本来の目的であるK中間子と他の粒子の識別も十分可能であることが確認された。また、実験期間中のゲインの長期変動に対応するためにビームを用いて較正も行った。
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Research Products
(3 results)