2006 Fiscal Year Annual Research Report
カラー分子動力学によるペンタクォーク及びマルチクオーク状態の構造の解明
Project/Area Number |
05J11831
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前沢 祐 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / 重イオン衝突実験 / クォーク・グルーオン・プラズマ |
Research Abstract |
クォークは通常、陽子・中性子などのハドロンに閉じ込められているが、温度が十分高くなると溶け出しクォークやグルーオンの自由度があらわになるクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)と呼ばれる状態に相転移すると考えられている。RHICではQGPの検証やその性質を解明する為、重イオン衝突実験が進められている。このような実験からの観測結果を理解する為には、有限温度・密度下におけるQCDの相構造や熱力学量の理論的予言が必要不可欠である。本研究ではQCDの性質を非摂動的に求める手段として有効な格子シミュレーションにより、QCDの相構造や熱力学量の温度・密度依存性に関する定量的な研究を行った。高温媒質中の重いクォーク間ポテンシャルは、QGP中でのクォークの性質を理解するうえで重要な物理量である。カラー自由度に基づく群論的分類により、クォーク(q)・反クォーク(q^^-)間ポテンシャルはカラー1重項と8重項に、qq間ポテンシャルはカラー6重項と反3重項のチャンネルにそれぞれ分けられる。本研究ではポリヤコフ・ループの空間的な相関から、QGP中でのそれぞれのカラーチャンネルおけるポテンシャルの温度依存性を定量的に計算した。その結果、カラー1重項と反3重項は引力となり、カラー8重項と6重項は斥力になることを見出した。また、これらのポテンシャルから媒質中のデバイ遮蔽質量を計算した。その結果、デバイ遮蔽質量のカラーチャンネル依存性は、相転移温度の2倍程度の高温でカシミア項に吸収されること、デバイ遮蔽質量は高温領域では2次の摂動論と良い一致を示すこと等が分かった。さらにテーラー展開法によりポテンシャルの密度意依存性を調べた結果、化学ポテンシャルに関する微分の1次の項の有無によってqq^^-間とqq間のポテンシャルの振る舞いに特徴的な違いを見出した。全てのカラーチャンネルに対するポテンシャルの温度・密度依存性の定量的な計算は本研究が最初である。
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Research Products
(4 results)