2005 Fiscal Year Annual Research Report
SDSSクエーサーを用いた宇宙の最大構造の探求と、クエーサーの形成・進化の解明
Project/Area Number |
05J11839
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢幡 和浩 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙の大規模構造 / クエーサー / 銀河系内ダスト |
Research Abstract |
2006年3月現在において、最大のサーベイ観測であるSloan Digital Sky Surveyによって得られた、分光クエーサーの空間的な分布の解析を行った。宇宙背景輻射の観測から広く信じられている平坦な宇宙を仮定し、10Mpc/hから数100Mpc/hのスケールでのクエーサーの2点相関関数を計算し、我々の宇宙におけるバリオンの量、及び宇宙定数に対して制限を与える事を試みた。さらに近年非常に注目されているBaryon Acoustic Oscillation(BAO)と呼ばれる、再結合直前の光子とバリオンの振る舞いにより現われる特徴的な構造が2点相関数に見られるかにも注目した。結果、クエーサーは密度が薄く有為なBAOを検出するには至らなかったが、2点相関関数から予測される宇宙のバリオンと宇宙定数は他の観測結果と一致を示し、人類がこれまでに得た宇宙の構成に対する観測上の知見が今回行われた独立な解析によって、より確かであることが明らかとなった。 2005年度に入りBAOへの注目は急激に増している。その理由の一つはBAOの特徴的なスケールが宇宙のものさしとしての役割を果たすからである。様々な赤方偏移におけるBAOを観測する事により、我々の宇宙の7割を占めるダークエネルギーの状態方程式を探る事ができると期待され、現在様々な観測計画が提案されている所である。 しかしながら、これを実現する為には観測上の様々な不定性を取り除かなければならない。数ある不定性の中でも、我々の銀河系内のダストによる減光はかなりの影響を及ぼしうるものであり、宇宙の大規模構造を探求するには避けては通れない課題である。そこでSDSSによって得られたクエーサー及び銀河のカウントを利用して現在使用されている銀河内ダストマップの信頼性を検証した。その結果現在のマップには何らかの系統的な誤差がある事が明らかとなった。
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