2007 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波伝導度スペクトル測定法の開発とそれを用いた高温超伝導体のゆらぎの研究
Project/Area Number |
05J11844
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大橋 健良 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マイクロ波電気伝導度 / 高温超伝導体 / 超伝導ゆらぎ / 動的スケーリング / 電子ドープ系 |
Research Abstract |
昨年度までに、マイクロ波を用いた超伝導ゆらぎ伝導度スペクトルの測定によって、ホールドープ系高温超伝導体La_<2-x>Sr_xCuO_4における超伝導ゆらぎの次元性がキャリア濃度の増加にともなって2次元〜3次元〜2次元と異常な変化を示すことを初めて明らかにしたが、この結果を雑誌Physical ReviewBに投稿した。 今年度は、ホールドープ系高温超伝導体とはキャリアの符号が異なる、電子ドープ系高温超伝導体La_<2-x>Ce_xCuO_4の超伝導ゆらぎについて、同様に、ゆらぎ伝導度スペクトルの動的スケーリング解析から測定を行い、そのキャリア濃度依存性を調べた。その結果、電子ドープ系高温超伝導体では超伝導ゆらぎの性質がキャリア濃度によらず全てのドープ領域で3次元XY的であることを初めて明らかにした。さらに、ゆらぎ伝導度の磁場依存性からも3次元XY的な超伝導ゆらぎが確認できた。 このようなキャリア濃度に依存しない振る舞いは、キャリア濃度によってゆらぎの性質が大きく変化するホールドープ系高温超伝導体とは対照的であり、高温超伝導発現のメカニズムがホールドープ系と電子ドープ系で同一ではなく、クーパー対(超伝導電子対)の形成が、ホールドープ系では最適ドープ近傍を除いて2次元的である一方で、電子ドープ系では全ての組成領域で3次元的であることが分かった。同時にこのことは、ホールドープ系の最適ドープ近傍でCuO_2面間の超伝導の相関を増強する特殊なメカニズムが働いていることを示唆しており、近年議論されている「隠れた量子臨界点」にともなう量子臨界ゆらぎの影響の可能性が考えられる。以上のように、ホールドープ系、電子ドープ系双方の高温超伝導体の幅広い組成領域における超伝導ゆらぎの測定から、高温超伝導体の電子相図の包括的な理解に貢献する新たな知見を得ることができた。
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Research Products
(3 results)