2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11857
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠原 裕一 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 重い電子系超伝導体 / 超音波測定 / 渦糸状態 / 熱伝導率テンソル / 準粒子輸送特性 |
Research Abstract |
1.超音波による重い電子系超伝導体CeCoIn_5の渦糸状態の研究 重い電子系超伝導体CeCgIn_5において,超伝導が破壊される上部臨界磁場近傍H_<c2>の高磁場領域で新しい超伝導相,Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov(FFLO)相の存在が示唆されているが,詳細は明らかになっていなかった.そこで研究代表者は超音波による音速測定を重い電子系超伝導体CeCoIn_5について超伝導相全体をカバーする温度・磁場領域で行った. その結果,FFLO相において横波の音速に顕著な変化が観測された.これはFFLO相において超伝導秩序変数が0になる部分,すなわちノードをもつ構造をしていることを強く示唆している.さらに音速測定からH_<c2>における一次転移の証拠が得られた.このことは超伝導状態がパウリ常磁性効果によって抑制されていることを示唆しており,高磁場相がFFLO相であることを強く示唆している. 2.熱伝導率測定によるCeCoIn_5の超伝導状態における準粒子輸送特性の研究 CeCoIn_5において,超伝導状態になると準粒子の平均自由行程が増加するという,高温超伝導体に類似した振る舞いが観測されている.このことは超伝導発現機構と密接に関係していると考えられるが、詳細な研究は行われていなかった.そこで研究代表者は熱伝導率テンソルの測定を重い電子系においてはじめて行った.その結果,熱ホール伝導率を測定することによってはじめてCeCoIn_5において破超伝導体に特徴的なふるまいが観測された.また準粒子の平均自由行程は非常に奇妙な磁場依存性を示し,新規な渦糸状態をとる可能性が示唆された.またこの結果より超伝導ギャップ構造はd_<x2-y2>であることが支持される. 申請課題である超音波測定は非常に困難であることが分かってきた.しかしながら研究申請者は測定手法を超音波測定から熱伝導率測定として同様の研究を行う.すでに装置は完成しており,これによって異方的超伝導体のノード構造を明らかにする予定である.
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