2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11857
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠原 裕一 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | βパイロクロア酸化物超伝導体 / 重い電子系超伝導体 / 熱伝導率 / 渦糸状態 / 準粒子輸送特性 / マイクロ波伝導率 |
Research Abstract |
1.βパイロクロア酸化物超伝導体KOs_2O_6の超伝導状態の研究 βパイロクロア酸化物AOs_2O_6(A=K,Os,Rb)は,パイロクロア格子を有する酸化物における2例目の超伝導体として注目を浴びている.その中で最も高い超伝導転移温度Tcをもち,Aサイトに位置するアルカリ原子のラットリング運動が最も強く,その影響が諸物性特性に顕著に現れるKOs_2O_6は,他のパイロクロア超伝導体とは異なる超伝導状態を取ることが期待される.そこで研究代表者は熱伝導率およびマイクロは伝導率の測定により超伝導状態を詳細に調べた. その結果,KOs_2O_6は他のパイロクロア超伝導体と同様にして超伝導ギャップが当方的に開いたフルギャップ超伝導体であることが明らかとなった.一方で準粒子輸送特性からは強い電子相関をもつ系に特有のふるまいが観測された.通常強い電子相関が存在する場合には,電子間の強いクーロン斥力のために超伝導ギャップは異方的なものとなる.従って,KOs_2O_6は強い電子相関をもつにも関わらず,フルギャップ超伝導を示すという,大変ユニークな超伝導体であることが明らかとなった. 2.重い電子系超伝導体URu_2Si_2の渦糸状態の研究 重い電子系超伝導体は隠れた秩序と呼ばれる,発見から20年以上経つにも関わらず未だ不明の秩序の下で超伝導を示す.通常超伝導と共存する相は磁気秩序相であるのに対し,隠れた秩序は非磁性であり,特異な超伝導状態が期待される.しかしながら超伝導状態についての研究は少なく,よく分かっていなかった. 研究代表者はこれまでの中で最も純良な単結晶を用い,熱伝導率測定を行った.その結果,上部臨界磁場Hc_2において熱伝導率がとびを示し減少するという,これまでにないふるまいが観測された.またこのふるまいが特有の電子構造に由来していることを明らかにした.準粒子の低エネルギー励起の研究より,URu_2Si_2がマルチバンド超伝導体であることが明らかになった.それぞれのバンドの超伝導ギャップ構造を求めた結果,カイラルd波で最もよく説明できることが分かった.この結果は隣接する反強磁性相の揺らぎが超伝導に重要であることを示唆している. 熱伝導率測定においてはこれまでの最低温度(〜100mK)で磁場の角度回転の測定に成功している.これは超音波測定にすぐにでも応用可能である.
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[Journal Article] Uncommonly high upper critical field of the pyrochlore superconductor KOs_2O_6 below the enhanced paramagnetic limit2006
Author(s)
T. Shibachi, L. Krusin-Elbaum, Y. Kasahara, Y. Shimono, Y. Matsuda, R.D. McDonald, C. H. Mielke, S. Yonezawa, Z. Hiroi, M. Arai, T. Kita, G. Blatter, M. Sigrist
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Journal Title
Physical Review B 74・22
Pages: 220506