2005 Fiscal Year Annual Research Report
弱い結合を持つ分子系に対する高速な第一原理分子動力学法の開発と応用
Project/Area Number |
05J11900
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 健 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | van der Waals結合 / 水素結合 / 密度汎関数法 / 大規模分子系 |
Research Abstract |
生体内で最も重要な物質の一つであるタンパク質の構造を決定する主要な要因は、水素結合やvan der Waals(vdW)力などの弱い相互作用である。また機能性タンパク質の多くが、分子内の相補的な水素結合の結合交代を通してプロトン移動を行い、各種生理機能を発現している。一方、合成化学の分野でも近年、弱い相互作用を駆動力とする分子の自己集合現象を活用した反応が注目されている。これらの反応は、従来の化学合成では作れない、様々な巨大構造体を自発的かつ定量的に合成できるため、今後の合成化学の大きな柱となる可能性を秘めている。このように、化学における弱い相互作用の重要性は、いくら強調してもしすぎることはない。弱い結合に関する統一・整理された知見を得、その制御法を確立することは21世紀の化学の最重要課題である。そしてその実現には、実験データの蓄積と、理論による現象のより本質的な理解が不可欠である。しかし、現状の理論化学には、「弱い結合の算出は大変困難である」、「リアル系をモデル化せずに扱うには膨大な計算costがかかる」という二つの大きな問題が存在する。そこで本申請課題では、これらの問題を解決し、弱い結合を持つ分子系の反応をシミュレートする高精度かつ高速な計算法を開発する。具体的には申請者が修士研究で開発した密度汎関数法(DFT)に基づくvan der Waals力計算法であるLC-DFT+ALL法を発展させ、弱い結合系に対して一般的に適用可能な計算方法を確立する。 この目的のため本年度は,LC-DFT+ALL法を用いて様々なvdW系,及び水素結合系への適用を行い,その適用性を検討した。その結果,LC-DFT+ALL法は,vdW力を非常に精度良く算出するものの,水素結合を若干過大評価することがわかった.
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Research Products
(2 results)