2005 Fiscal Year Annual Research Report
磁性薄膜のスピン再配列転移の動的過程の追跡とその機構の3次元的解明
Project/Area Number |
05J11911
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 仁 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピン再配列転移 / 磁性薄膜 / XMCD / XAFS / 磁気異方性 |
Research Abstract |
当初、エネルギー分散型XAFS(disp. XAFS)法を用いてFe/Ni/Cu(001)磁性薄膜のスピン再配列転移の動的過程の追跡を行う予定であったが、エネルギー掃引を速く行うQuick XAFS(X線吸収微細構造)法により行った。これは測定エネルギー範囲、測定速度等を考慮して、Quick XAFS法の方が適していると判断したためである。Ni薄膜上にFe薄膜が成長して行くのに伴って、スピン再配列転移が進行して行く様子が認められた。この測定中は、磁場を印加していない。一方、以前のスピン再配列転移前後の状態を見る場合には、それぞれの状態で磁場をかけた後の残留磁化で測定を行っていた。この違いから、スピン再配列転移過程のみならず、転移がほぼ完了した状態が、磁場印加の有無によって異なることが示唆された。現在これらの測定結果をさらに解析中である。 また、Fe/Ni/Cu(001)薄膜のFeの深さ分解XMCD法による測定から、2層のFeの表面層と界面層の磁気的情報を分離して求めることができた。2層全体としての磁気異方性はほぼゼロであった。ところが、表面層は垂直磁気異方性を持ち、界面層は面内磁気異方性を持つことがわかった。 顕微鏡観察であるが、磁気力顕微鏡(MFM)による測定の前に、通常の走査型トンネル電子顕微鏡(STM)による観察を行うこととした。新たに納入された装置を、本研究に適したものとするための改良を行った。現在、ほぼ準備が完了した状態であり、来年度以降、実際に観察が可能であると考えている。
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