2006 Fiscal Year Annual Research Report
磁性薄膜のスピン再配列転移の動的過程の追跡とその機構の3次元的解明
Project/Area Number |
05J11911
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 仁 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁性薄膜 / スピン再配列転移(SRT) / XMCD / XAFS / 磁気異方性 |
Research Abstract |
昨年度までに、Fe/Ni/Cu(001)系のFeが、1原子層、及び2原子層の表面層で大きな面直磁気異方性を持つことを明らかにした。このようなFeの性質がこの系のスピン再配列転移(SRT)の大きな要因となっていることを突き止めた。そこで、これらのFeの性質が他の系でも見られるのか、またSRTとの関連について理解を深めるため、新たな系を探索した。その結果、Fe/Co/Pd(111)系でも面内磁化→面直磁化→面内磁化というSRTを発見した。やはり、1原子層のFeでは大きな面直磁気異方性が見られ、面直磁化へのSRTの要因と考えられる。また、Fe/Ni/Cu(001)系と比較して、現象としては同じようだが、SRTの相図を作ると、転移境界線の振る舞いに違いが見られた。これは系を構成するそれぞれの元素層の磁気異方性の違いによると考えられる。現在、詳細な解析・考察を進めているが、SRTの機構についての理解が深められると考えている。 次に、磁性元素が引き起こすSRTとの比較で、原子・分子が引き起こすものとしてCO/Fe/Cu(001)系の研究を行った。吸着したCOの効果によって、Fe/Cu(001)磁性薄膜が面直磁化→面内磁化へのSRTを起こすことがわかった。ここでは、3、4原子層の薄膜は転移するが、2原子層の薄膜は転移しないなど、特異な膜厚依存性が見られた。この系の深さ分解XMCD法による実験から、CO吸着後では、3原子層薄膜では表面1層、4原子層薄膜では表面から2層の磁化が消失していることがわかった。Fe/Ni/Cu(001)系などから推定して、Fe薄膜の表面層は面直磁気異方性を持つと考えられ、表面層の磁化を失った3、4原子層の薄膜は、この面直磁気異方性を失って面内磁化へと転移したものと言える。今後、COの吸着構造、Fe薄膜の原子構造等も含めて詳細に検討したいと考えている。
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Research Products
(5 results)