2007 Fiscal Year Annual Research Report
鉄触媒を用いた不活性結合切断を鍵とする新規炭素-炭素結合形成反応の開発
Project/Area Number |
05J11913
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 慎庫 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄触媒 / カルボメタル化反応 / 不斉反応 / オキサビシクロアルケン / 不斉配位子 / 不活性結合切断 / クロスカップりグ反応 / 普遍金属 |
Research Abstract |
本研究は,安価で無毒な鉄触媒を用いた効率的かつ高選択的な新規炭素-炭素結合形成反応の開発を目指すものである.最終年度である今年度は,鉄触媒の配位場の精密制御を目的に新規不斉反応の開発を行った. 鉄触媒を用いた不斉合成反応は極めて困難な反応であり,特に有機金属反応剤存在下でのエナンチオ選択的炭素-炭素結合形成反応はほとんど知られていなかった.今回,鉄触媒に最適な反応条件を精査した結果,オキサビシクロアルケン類に対する芳香族亜鉛試薬の開環付加反応がエナンチオ選択的に進行することを見出した.すなわち,触媒量の塩化鉄(III),(S,S)-CHIRAPHOS存在下,オキサビシクロアルケンに芳香族亜鉛反応剤を反応させると,炭素-炭素二重結合へのカルボメタル化反応が高エナンチオ選択的に進行し,酸で反応溶液を処理することで加水分解生成物を最高91%の光学純度で得ることができた.中間体として得られるカルボ亜鉛化中間体は求電子剤で捕捉することが可能であり,種々の求電子剤と良好に反応して対応する生成物を高収率で与えた.また,反応温度を制御することで,中間体のカルボ亜鉛化中間体から鏡像異性体過剰率の低下を伴うことなく,対応する環状ホモアリルァルコールへと変換できた.本反応は還元条件下,鉄触媒の配位環境を不斉配位子で制御した極めて数少ない例の一つである.本成果は学術論文には未報告であるが,一部は日本化学会第88春季年会にて発表済みであり,現在学術雑誌への投稿原稿を準備中である.
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Research Products
(4 results)