2006 Fiscal Year Annual Research Report
アコヤ貝の貝殻形成に関与する有機基質の構造および機能解析
Project/Area Number |
05J11934
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 道生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | バイオミネラリゼーション / アコヤガイ / 真珠 / 炭酸カルシウム / キチン / 基質タンパク質 / アラゴナイト / カルサイト |
Research Abstract |
生物が生体の内外に鉱物を主成分とする硬組織を形成する現象(バイオミネラリゼーション)は甲殻類の外骨格、軟体動物の貝殻、人の歯・骨など幅広い生物に見られる普遍現象である。バイオミネラリゼーションは単なる無機化学反応ではなく、そこに含まれる少量の有機基質が鉱物結晶の形成、成長、多形、形態等の制御に関わっていると考えられている。本研究の材料であるアコヤ貝貝殻は内側に炭酸カルシウムのアラゴナイト結晶から成る真珠層、外側に炭酸カルシウムのカルサイト結晶から成る稜柱層と、異なる2つの結晶多形から構成されているのが特徴である。このように同一の場に最安定であるカルサイト結晶と準安定であるアラゴナイト結晶を作り出す機構に、有機基質が関与していると考えられるが、未だそのメカニズムは不明である。そこで貝殻から有機基質を単離・精製し、構造機能解析を行うことで貝殻形成のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 研究初年度にはアコヤガイ貝殻稜柱層から稜柱層特異的基質タンパク質Prismalin-14の単離・精製、構造・機能解析を行った。その結果、N末端およびC末端の酸性領域が炭酸カルシウム結晶と相互作用し、グリシンとチロシンに富む領域がキチンと結合した。またPrismalin-14が実際に稜柱層の有機基盤に局在したことから、Prismalin-14が有機基盤としてキチンと炭酸カルシウムの仲介作用を行っていることを明らかにした。 また研究次年度には、これまで明らかにされていなかった稜柱層内のキチンについて、calcofluor染色、IR、NMRを用いてキチンの存在を証明した。さらにこのキチンを合成するキチン合成酵素のクローニングを行った。アコヤガイキチン合成酵素(PfCHS1)はN末端にmyosin head domainを有しており、アクチンなどの細胞骨格と連動して働くのではないかと考えられた。
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