2006 Fiscal Year Annual Research Report
環境調和を指向した実践的不斉合成法の開発と創薬への展開
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05J11948
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清原 宏 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 触媒的不斉Mannich型反応 / イミノホスホネート / エンカルバメート / エナミド / 触媒回転頻度 / 脂肪族アルデヒド由来のイミン / β-ケトエステル |
Research Abstract |
筆者は、これまでにエンカルバメートのイミノホスホネートに対する求核付加反応においては、対応するケイ素エノラートの付加反応に比して約1000倍もの頻度で触媒回転が起こることを見いだしていた。そこで次に触媒量の低減化を指向し、求核剤の設計を行ったところ、類似の構造を有するエナミドを用いた場合に、30分という反応時間の短さを維持したまま、触媒量を1.5mol%にまで減じることができた。エンカルバメートあるいはエナミド上のプロトンが、ケイ素に比して速やかに転位したことが、このような高い触媒回転頻度が発現する主要因であることもわかった。本研究は触媒回転阻害が起こりやすいヘテロ原子含有化合物の触媒的不斉合成に新たな指針を与えるものである。 また、エンカルバメートは強酸性条件下、容易にプロトン化を受けイミニウムを精製することを見いだしていた。そこで、アルデヒド由来のエンカルバメートを反応系中でプロトン化することで生成する脂肪族アルデヒド由来のイミニウムに対する求核剤の付加反応の開発を計画した。筆者はLewis酸を触媒とする1,3-ジカルボニル化合物の直接的付加反応の開発を行い、触媒量のスカンジウムや2価の銅のトリフルオロメタンスルホン酸塩を用いることで種々のβ-ケトエステルの付加反応が良好な収率で進行することを見いだした。一般に脂肪族アルデヒド由来のイミンは単離精製が困難であり、本手法はその安定な異性体を前駆体として直接用いることが出来るため非常に価値が高い。 さらに、筆者は、触媒量の活性化剤を用いアミドの直接的Mannich型反応の開発を行なった。アミドは最も酸性度の低いカルボニル化合物であり、これまでに触媒量の活性化剤を用いた付加反応の例はなかった。筆者はケイ素Lewis酸を用いることで反応が速やかに進行し、触媒量を2mol%にまで低減化しても目的物が定量的に得られることを見いだした。
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