2005 Fiscal Year Annual Research Report
浸潤突起においてMT1-MMPと相互作用する因子の網羅的解析
Project/Area Number |
05J11992
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星野 大輔 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フォーカストプロテオミクス / MT1-MMP / 浸潤突起 / MMP9 |
Research Abstract |
従来の細胞や組織を用いたプロテオミクスでは検出されたタンパク質相互の関係や生命現象との因果関係とを結びつけることが困難であった。そこで解析の対象を限定し、特定の翻訳後修飾の状態、あるいは特定の細胞装置に焦点を当てることで特定の細胞機能情報を精密に得る試みが行われるようになっており、フォーカストプロテオミクスと呼ばれている。 本研究では、実際に浸潤の起こる部位である浸潤突起に注目してMT1-MMPと相互作用する因子をフォーカストプロテオミクス解析で網羅的に同定した。 まず突起形成が人為的に同調可能であることが望ましいためランダムmigrationの少ない癌細胞を検索し、同細胞に浸潤突起形成を伴ったmigrationを誘導するchemoattractantを検討し、浸潤突起における内在性MT1-MMPと相互作用する因子を抗MT1-MMP抗体カラムによりそれぞれ単離後フォーカストプロテオミクス解析で同定した。 さらに、MT1-MMPの酵素活性により分解されてしまう相互作用因子が存在する可能性を考慮し、FLAGタグを融合させた恒常的非活性型MT1-MMPを安定発現させた細胞の浸潤突起から抗FLAG抗体カラムを用いて同様にフォーカストプロテオミクス解析した。 解析から得られた因子を(x4)HT1080細胞を用いてノックダウン及びノックインした細胞株を樹立し、matrigelへの浸潤能を調べたところ有意な差が見られた。MT1-MMPは、MMP2の活性化を亢進すること、またx4がMT1-MMPと結合することからMMP2の活性化状態の違いにより浸潤能に有意な差が得られたことが予想された。そこで、プロテアーゼ活性を調べることが可能なゼラチンザイモグラフィーを行ったところ、興味深いことに、MMP2の発現量及び活性化状態に変化が見られなかったが、MMP9の発現量及び活性化状態が亢進していることが明らかとなった。現在、x4、MT1-MMP, MMP9の関係を明らかにしつつある。 本研究は浸潤メカニズム解明の基礎的な知見として重要な位置を占めるだけでなく、新たな転移抑制を目的とした治療に役立ちうり、その成果は癌の転移抑制に貢献するため社会的にも非常に重要な情報をもたらすと考えられる。
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