2006 Fiscal Year Annual Research Report
膜脂質に注目したオルガネラ膜構築の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
05J12009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 健太 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 植物 / オルガネラ / 葉緑体 / ミトコンドリア / 生体膜脂質 / リン脂質 / 胚発生 |
Research Abstract |
本申請研究課題は、チラコイド膜とミトコンドリア膜のオルガネラ膜を構成する生体膜脂質であるホスファチジルグリセロールとカルジオリピン(CL)について、それぞれの生合成系鍵酵素PGP1、CLSに着目し、その酵素遺伝子を破壊したシロイヌナズナ変異体pgp1、clsを用いて、生体膜構築における脂質分子種の機能を明らかにすることを目的としたものである。 今年度は、ミトコンドリア及び色素体に異なる色の蛍光タンパク質が局在する植物体と、pgp1及びclsの変異体とを交配させることで、変異体における胚発生期のオルガネラの形態を解析した。その結果、cls変異体ではミトコンドリアに形態異常が見られた。そして、この形態異常を指標にCLS/cls変異体の生育法を検討して、通常生育法では得られないcls/clsの個体を得ることに成功した。 cls/clsは子葉の維管束パターンが不完全であり、根をはじめとして生長が著しく遅く、コルメラ細胞の形状が変化していた。また、乾燥に弱く、早い段階で頂芽優勢が崩れるなど様々な異常を呈した。これらの異常部位は、プロモーターGUSによって調べた発現箇所とよく一致しており、CLS遺伝子の破壊による効果と考えられる。 これまで、シロイヌナズナで知られているミトコンドリアが原因と考えられる変異体は、1)胚発生過程に影響しホモの遺伝子破壊株がlethalとなる変異体、2)ストレス応答が変化するなど、通常生育時の表現型を伴わない変異体のいずれかであった。したがって、本研究で得られた結果は、多細胞である植物においてミトコンドリアがどのような機能に重要な役割を果たすかに示唆を与える初めての例となる可能性がある。 今後はcls/clsにおいてCL量やCL合成活性が変化しているか、cls/clsの異常がどのような機構で引き起こされるのかを明らかにしていこうと考えている。
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